検察起案の勉強の方向性としては,大きくは次の3つであろうと思います。
① 司法研修所検察教官室「検察終局処分起案の考え方」の熟読
検察起案では,終局処分起案がウエイトのほとんどを占めており,また,「このように書くべし」という型も検察教官室から提示されています。この型を紹介しているのが,「検察終局処分起案の考え方」という白表紙です。
「検察終局処分起案の考え方」の型どおりに書けていなかった場合に,即日起案で悪い評価がついたり,二回試験に不合格になったとしても,文句は言えません。修習中,修習生の多くはあまり自学自習していないというのが実態ですが,それでも即日起案に臨むにあたって,ほとんどの修習生が「検察終局処分起案の考え方」の記載内容は押さえてきます。したがって,「検察終局処分起案の考え方」で示されている考え方が身に付いていない場合,当然悪い評価が付きますし,良い評価をとろうとした場合,形式面が当然できていることを前提に内容面でそれなりの質が求められるため,他の科目に比べ,良い評価をとることが難しいように思います。
「検察終局処分起案の考え方」は薄く,すぐに通読できるので,即日起案に臨むにあたっては,「検察終局処分起案の考え方」を熟読し,起案の手順をしっかり頭に入れておきましょう。
② 基本的な犯罪の構成要件等の確認
刑法総論の共犯,正当防衛(過剰防衛),刑法各論の住居侵入,窃盗,強盗(致傷),恐喝,(業務上)横領,背任,傷害(致死),殺人,業務上過失致死傷,通貨偽造,文書偽造,放火,贈収賄等の基本的な犯罪の構成要件は押さえておく必要があります。逆に言うと,そこまでマニアックな犯罪は出ないと思うので,起案対策としては,そこまで細かいところまでは勉強しなくてよいと思います。
司法試験でたくさん勉強してきた,「事実の錯誤」とか,「承継的共犯」とか,そういう法的論点に関する問題は,私が経験してきた限り,出題されていません。
ただし,終局処分起案にあたって,実行の着手時期や既遂時期の認定はしばしば必要になるため,各犯罪について確認しておくとよいと思います。
③ 「検察演習問題」による手続問題への対応
検察起案では,刑事手続に関する問題が出題されます。これのネタ本が「検察演習問題」という白表紙です。手続問題の対策としては,「検察演習問題」に取り組んでおれば必要十分です。
配属庁会によっては,「検察演習問題」の勉強会を開いてくれるところもあるので,参加するとよいと思います。参加しなくても,参加者からレジュメをもらい,それに基づいて勉強するか,配属庁会が勉強会を開催していない場合は,各自で「検察演習問題」を検討しておくと手続問題が怖くなくなると思います。
プラスαの対策
上記以外のプラスαの対策としては,実務修習等で量刑相場を確認しておくこと,「検察講義案」や末永秀夫ほか「6訂版 犯罪事実記載の実務 刑法犯」(実務法規・2014年)で公訴事実の書き方を確認しておくこと,没収等の要件を確認しておくこと,罪数処理について確認しておくこと等が考えられます。