【2020年民法改正】更改【勉強ノート】

更改の要件等の明確化

旧法 新法

【513条】(更改)
1項:当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは,その債務は,更改によって消滅する。

2項:条件付債務を無条件債務としたとき,無条件債務に条件を付したとき,又は債務の条件を変更したときは,いずれも債務の要素を変更したものとみなす。

【513条】(更改)
当事者が従前の債務に代えて,新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは,従前の債務は,更改によって消滅する。
一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
二 従前の債務者が第三者と交替するもの
三 従前の債権者が第三者と交替するもの

 新法§513では,旧法§513Ⅰの「債務の要素」の内容を新法§513各号にて明確化するとともに,更改が「債務の要素」の変更という客観的要件のみで成立するのではなく,従前の債務を消滅させたうえで新しい債務を発生させる当事者の意思が更改の成立には必要であることが明らかにされました。

 したがって,従前の給付の内容と異なる内容とする旨の当事者間の合意が成立したとしても,それが重要な変更ではなく,当事者が従前の債務を存続させる意図であると解される場合には,更改ではなく,通常は代物弁済契約(ないしその予約)と解されることになります。

 また,従前の債務者が第三者と交替する場合でも,当事者が従前の債務を存続させる意図であると解されるのであれば,それは更改ではなく,免責的債務引受であると解されます。

 さらに,従前の債権者が第三者と交替する場合でも,当事者が従前の債務を存続させる意図であると解されるのであれば,それは更改ではなく,債権譲渡と解されます。

 このように更改の成否を判断するにあたっては,当事者の意思の実質的解釈が重要となります。

 なお,旧法§513Ⅱの条件付債務を無条件とすることや無条件の債務に条件を付すこと,債務の条件を変更することについて,一般には,当事者としてはこれらを更改とは考えず,契約内容の変更として従前の債務を維持して考えるのが通常でした。そこで,これらを更改とみなす旧法§513Ⅱは妥当でないとして,新法では削除されました。

債務者の交替による更改の要件の見直し

旧法 新法
【514条】(債務者の交替による更改)
債務者の交替による更改は,債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。ただし,更改前の債務者の意思に反するときは,この限りでない。

【514条】(債務者の交替による更改)
1項:債務者の交替による更改は,債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において,更改は,債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に,その効力を生ずる。

2項:債務者の交替による更改後の債務者は,更改前の債務者に対して求償権を取得しない。

 債務者の交替による更改と機能が類似する免責的債務引受の要件との整合性を考慮し,新法§514Ⅰ前段では,更改前の債務者の意思に反するときであっても,債務者の交替による更改をすることができることが明らかにされました。

 ただし,更改の効力は,債権者が更改前の債務者に対して契約の成立を通知した時初めて発生します(同項後段)。

 また,債務者の交替による更改後の債務者は,更改前の債務者に対して求償権を取得しない旨の規定も新設されました(同条Ⅱ)。やはり同様の規定は免責的債務引受でも設けられています(新法§472の3)。

債権者の交替による更改の要件の明確化等

旧法 新法
【515条】(債権者の交替による更改)
債権者の交替による更改は,確定日付のある証書によってしなければ,第三者に対抗することができない。

【515条】(債権者の交替による更改)
1項:債権者の交替による更改は,更改前の債権者,更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる。

2項:債権者の交替による更改は,確定日付のある証書によってしなければ,第三者に対抗することができない。

【516条】
第四百六十八条第一項の規定は,債権者の交替による更改について準用する。
削除

 債権者の交替による更改が,旧債権者・新債権者・債務者の三者の契約によって成立することが明文化されました(新法§515Ⅰ)。

 同条Ⅱは,旧法§515と同じ規定です。

 また,債権譲渡について異議をとどめない承諾の制度(旧法§468Ⅰ)を廃止したことに伴い,これを準用していた旧法§516も削除されました。

旧法§517の削除

旧法 新法
【517条】(更改前の債務が消滅しない場合)
更改によって生じた債務が,不法な原因のため又は当事者の知らない事由によって成立せず又は取り消されたときは,更改前の債務は,消滅しない。
削除

 旧法§517については,その反対解釈により,①不法な原因以外の債権者の知っていた事由によって新債務が成立しないとき,又は②債権者の知っていた事由によって新債務が取り消されたときには,更改の効力は維持され,旧債務は消滅すると解されていました。しかし,この規律内容は更改の当事者の合理的な意思に合致しているとはいえず,合理性を欠くことから,このような反対解釈を生む同条の規定は削除されました。

 これにより,新債務に無効・取消しの原因があり,それにより新債務が成立しない場合には,そのことを債権者が知っていたとしても,債権者が当然に旧債務を免除したことにはならなくなりました

更改後の債務への担保権の移転に関する規律の見直し

旧法 新法
【518条】(更改後の債務への担保の移転)
更改の当事者は,更改前の債務の目的の限度において,その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし,第三者がこれを設定した場合には,その承諾を得なければならない。

【518条】(更改後の債務への担保の移転)
1項:債権者(債権者の交替による更改にあっては,更改前の債権者)は,更改前の債務の目的の限度において,その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし,第三者がこれを設定した場合には,その承諾を得なければならない。

2項:前項の質権又は抵当権の移転は,あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては,債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。

 旧法§518本文では,更改の当事者の合意によって,債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができるとしていました。

 しかし,更改における債務者にとって担保の移転が不利になることはないため,債務者を含めた当事者の合意を必要とすることに合理性がないと指摘されていました。

 そこで,新法§518Ⅰ本文では,債権者の単独の意思表示のみで質権等を更改後の債務に移すことができることとされました。

 ただし,質権等の移転は,あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては,債務者)に対してする意思表示によってしなければ,更改は無効となってしまうことには注意が必要です(同条Ⅱ)。

 なお,更改による担保の移転に最も利害関係を有するのは,担保設定者なので,担保設定者が更改における第三者である場合には,当該第三者の承諾を得ることが必要です(新法§518Ⅰ但書)。この点は従来と変わりがありません。

確認問題〔更改〕

新法に基づいて回答してください!(全3問)

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