①他人物贈与を明文で認める改正,②書面によらない贈与の効力消滅に関し,「撤回」との文言を「解除」に改める改正,③贈与者の担保責任に関し,契約責任説に適合的な規定に改める改正が行われました。
贈与の対象
旧法 | 新法 |
【549条】(贈与) 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生ずる。 |
【549条】(贈与) 贈与は,当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生ずる。 |
新法では,判例(最判昭和44年1月31日)を踏まえ,他人物贈与も有効であることが明記されました(新法§549)。
贈与の効力消滅
旧法 | 新法 |
【550条】(書面によらない贈与の撤回) 書面によらない贈与は,各当事者が撤回することができる。ただし,履行の終わった部分については,この限りでない。 |
【550条】(書面によらない贈与の解除) 書面によらない贈与は,各当事者が解除をすることができる。ただし,履行の終わった部分については,この限りでない。 |
旧法§550本文の「撤回」は,実質的に「解除」と同義であったため,他の規定の字句と統一し,「解除」に文言を改めました(新法§550本文)。
贈与の担保責任
旧法 | 新法 |
【551条】(贈与者の担保責任) 2項:負担付贈与については,贈与者は,その負担の限度において,売主と同じく担保の責任を負う。 |
【551条】(贈与者の引渡義務等) 2項:負担付贈与については,贈与者は,その負担の限度において,売主と同じく担保の責任を負う。 |
旧法では,贈与者が,目的物の瑕疵につき悪意でありながら,受贈者に告知しなかった場合を除き,贈与者は,その瑕疵ある目的物を受贈者に引き渡せば足り,それによって担保責任を負うことはない旨定められていました(旧法§550Ⅰ)。
贈与の無償性に鑑みれば,有償契約である売買契約の売主等よりも贈与者の責任を軽くするのが妥当であるため,かかる定めは合理的なものです。
ところが,新法では,契約責任説の立場が採用されました。契約責任説とは,契約の目的物が特定物であろうが,種類物であろうが,契約の内容に適合しない目的物の引渡しは引渡義務の債務不履行(不完全履行)であるという考え方です。
そこで,贈与についても,整合性をとり,新法下では,贈与者は,種類・品質・数量に関して贈与契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務を負うものと考えられることになりました。
一方で,前述のとおり,贈与の無償性に鑑みれば,贈与者については,有償契約である売買の売主等と比較し,責任を軽減すべきです。
そこで,新法では,贈与者が契約内容に適合した目的物の引渡義務を負うことを前提とした上で,その目的物について,目的物を特定した時の状態で引き渡すことを合意していたものと推定する旨定められました(新法§551Ⅰ)。
そうすると,引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合において,当事者間でかかる合意とは異なる合意等がなされていたことを受贈者側で立証すれば,受贈者は贈与者に対して担保責任を追及し得ることになります。
そして,担保責任として,受贈者は,①追完請求のほか,②損害賠償請求や契約解除をなし得,これらについて特別の規定は設けられていませんが,①については贈与の意義から,②については債務不履行の一般原則(新法§415,§541,§542)から導かれることになります。
ちなみに,新法§551Ⅱの負担付贈与は,規定自体の改正はされていませんが,売買の規定が整備されたため,その影響を受けることになります。
確認問題
特になし。