【2020年民法改正】弁済②―準占有者への弁済【勉強ノート】

改正のポイント

 旧法§478の「債権の準占有者」との文言が「受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」(新法§478)に改められたことにより,債権者の代理人と称する者等も適用対象であることが条文上明確になりました。

 また,真正な受取証書の持参人に対する弁済に関する旧法§480が削除され,かかる弁済についても,新法§478によって処理されることになりました。

分かりやすい文言への変更

旧法 新法
【478条】(債権の準占有者に対する弁済)
債権の準占有者に対してした弁済は,その弁済をした者が善意であり,かつ,過失がなかったときに限り,その効力を有する。
【478条】(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は,その弁済をした者が善意であり,かつ,過失がなかったときに限り,その効力を有する。

 旧法§478の「債権の準占有者」との文言を分かりやすいものとするために,「受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」(新法§478)に変更されました。

 この変更により,自らを債権者であると主張している第三者だけでなく,債権者の代理人と称する者(最判昭和37年8月21日)も,新法§478の適用対象であることが文言上明らかになりました。

 また,どの程度の「外観」を有すれば受領権者と認められるかは「取引上の社会通念」に照らして判断されることも明文化されました。

 「取引上の社会通念」は,業界の通例に加え,社会一般の常識も含む概念であることから,弁済を求めた相手方が真の債権者であることを確認するために債務者が通常どのような判断資料を用いているのかといった業界の通例のみならず,そのような判断資料で債権者であることを確認することが社会常識に照らして相当かといった社会一般の常識も加味して,「外観」の有無を判断することになるといわれています。

受取証書の持参人への弁済に関する規定の削除

旧法 新法
【480条】(受取証書の持参人に対する弁済)
受取証書の持参人は,弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし,弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき,又は過失によって知らなかったときは,この限りでない。
削除

 預金通知や届出印等,受取証書以外にも弁済の受領権限を裏付ける書類が存在するにもかかわらず,受取証書だけを特別扱いして規定を設けることに合理性はないため,旧法§480条は削除されました。

 受取証書の持参人に対する弁済についても,新法§478条によって処理されることになります。

 そして,前述のとおり,新法§478によれば,弁済者の主観的要件の主張立証責任は弁済者に課されることになりますが,真正な受取証書の持参人に対する弁済であることが主張・立証された場合には,弁済者の善意・無過失は事実上推定されると考える余地があります。

確認問題〔弁済②―準占有者への弁済〕

新法に基づいて回答してください!(全2問)

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