組合契約の債務不履行があった場合
旧法 | 新法 |
規定なし |
【667条の2】(他の組合員の債務不履行) 2項:組合員は,他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として,組合契約を解除することができない。 |
同時履行の抗弁・危険負担の適用除外
新法では,組合契約について,同時履行の抗弁に関する新法§533と危険負担に関する新法§536は適用を排除する旨の規定が新設されています(新法§667の2Ⅰ)。
したがって,一部の組合員の出資義務に不履行があったとしても,出資債務の履行を受けた他の組合員は同時履行の抗弁権の行使により自身の出資義務の履行を拒むことができないですし,また,一部の組合員の出資債務の履行が不能となっても,他の組合員は出資の履行を拒むことができません。
これらの規定を組合契約にそのまま適用すると,組合員の一人が出資債務を履行せず,又はその出資債務が履行不能となった場合に,必要な出資がされず,組合の円滑な業務に支障をきたしかねないからです。
債務不履行解除の不可
また,新法では,組合契約は債務不履行を理由として解除することができない旨の規定が新設されています(同条Ⅱ)。
組合契約の終了に関する特別な規定として,脱退や除名,解散についての規定が設けられているからです(大判昭和14年6月20日)。
組合員の一人の意思表示の無効・取消原因の他の組合員への影響
旧法 | 新法 |
規定なし | 【667条の3】(組合員の一人についての意思表示の無効等) 組合員の一人について意思表示の無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間においては,組合契約は,その効力を妨げられない。 |
新法では,組合員の一人について意思表示の無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間においては,組合契約は,その効力を妨げられない旨の規定が新設されました(新法§667の3)。
組合契約は団体的な性格を有しているため,一人又は数人の組合員について契約締結の意思表示が無効となり,又は取り消されることにより,組合契約全体が無効となり,又は取り消されることになれば,他の組青委員は,契約の目的を達成することができないし,組合の外形を信頼して取引関係に入った第三者の利益も害されることになってしまうからです。
そして,旧法下では,組合が第三者と取引を開始する前後で意思表示の無効・取消しに関する規定の適用を区分し,組合が第三者と取引を開始した場合等については意思表示の無効・取消しの規定の適用を一定の範囲に制限する見解が有力でした。
しかし,新法§667の3では,組合が第三者と取引を開始したかどうかを問うことなく,組合員の一人について意思表示の無効・取消原因があっても,他の組合員の間においては,組合契約の効力を妨げられないとしています。
組合が第三者と取引を開始する前であっても,他の組合員の意思を尊重して組合契約の効力を認める必要があり,また,組合員の一人の意思表示の無効・取消原因の発生が,第三者と取引を開始する前か後かをめぐり紛争が生じるおそれがあるからです。
確認問題〔組合①―組合契約の効力〕
新法に基づいて回答してください!(全2問)