刑法
刑法総論
* 〔PCのみ〕罪名にマウスオーバーすると,条文が表示されます。* 各構成要件要素に付されている番号が❶,❶'となっているような場合は,それらの構成要件要素が択一的関係であることを示します。
No. | 要件 | 意義 | |
---|---|---|---|
36Ⅰ | 正当防衛 | ❶急迫不正の侵害 | 違法な侵害が現在しているか,差し迫っていること |
❷自己又は他人の権利 | |||
❸防衛するため | 侵害を認識し,これを避けようとする単純な心理状態 | ||
❹やむを得ずした | 正当な権利保護のための必要最小限度の反撃にとどまること(必要性+相当性) | ||
❺行為 |
● 参考文献
井田良「講義刑法学・総論〔第2版〕」(有斐閣・2018年)刑法各論
個人的法益に対する罪
* 〔PCのみ〕罪名にマウスオーバーすると,条文が表示されます。* 各構成要件要素に付されている番号が❶,❶'となっているような場合は,それらの構成要件要素が択一的関係であることを示します。
No. | 罪名 | 構成要件 | 意義 |
---|---|---|---|
130前 | 住居等侵入罪 | ❶人の住居 | 「人」=居住者以外の者 「住居」=人の起臥侵食に利用される場所 |
❶'人の看守する邸宅 | 「人の看守する」=侵入を防止する人的・物的設備を施すこと 「邸宅」=住居用に作られたが,現在,起臥寝食に利用されていないもの |
||
❶''人の看守する建造物 | 「建造物」=屋根を有し支柱等によって支えられた土地の定着物で,人が出入りすることのできる構造のものであり,住居用以外の建造物一般のこと | ||
❷正当な理由なく | 違法性阻却事由が存在しないこと | ||
❸侵入 | 住居権者(管理権者)の意思に反する立入り | ||
❹故意 | |||
176前 | 強制わいせつ罪 | ❶13歳以上の者に対し | |
❷暴行又は脅迫を用いて | 相手方の反抗を著しく困難にする程度のもの | ||
❸わいせつな行為 | 徒に性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為 | ||
❹故意 | |||
❺わいせつ目的 | 行為者の性欲を刺激,興奮,満足させる意図 | ||
176後 | 強制わいせつ罪 | ❶13歳未満の者に対し | |
❷わいせつな行為 | 徒に性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為 | ||
❸故意 | 客体や行為といった客観的要件及び相手方が13歳未満であることの認識 | ||
❹わいせつ目的 | 行為者の性欲を刺激,興奮,満足させる意図 | ||
177前 | 強制性交等罪 | ❶13歳以上の者に対し | |
❷暴行又は脅迫を用いて | 相手方の反抗を著しく困難にする程度であることを要する。 | ||
❸性交等 | 性交+肛門性交+口腔性交 | ||
❹故意 | |||
177後 | 強制性交等罪 | ❶13歳未満の者に対し | |
❷性交等 | 性交+肛門性交+口腔性交 | ||
❸故意 | |||
199 | 殺人罪 | ❶殺人の実行行為 | 人の死の結果を生じさせる現実的危険性のある行為 |
❷人の死の結果の発生 | |||
❸❶と❷の間の因果関係 | |||
❹故意 | 意図型/認識型(人が死ぬ危険性が高い行為を,そのような行為と分かって行ったこと) | ||
204 | 傷害罪 | ❶人の身体を | |
❷傷害 | 人の生理的機能を侵害すること | ||
❸故意 | 有形的方法→傷害の故意or暴行の故意 無形的方法→傷害の故意 |
||
205 | 傷害致死罪 | ❶人の身体を | |
❷傷害 | 人の生理的機能を侵害すること | ||
❸人を死亡させた | |||
❹❷と❸の間の因果関係 | |||
❺故意 | 有形的方法→傷害の故意or暴行の故意 無形的方法→傷害の故意 |
||
208 | 暴行罪 | ❶人を | |
❷暴行 | 人の身体に対する不法な有形力の行使 | ||
❸故意 | 人の身体に対して有形力を行使することを認識していること | ||
211前 | 業務上過失致傷罪 | ❶業務上 | 人の社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって,かつ,人の生命・身体に危害を加えるおそれのあるもの |
❷過失 | 結果予見可能性の存在を前提とする結果予見義務違反+結果回避可能性の存在を前提する結果回避義務違反 | ||
❸傷害結果 | 人の生理的機能を侵害すること | ||
❹❷と❸の因果関係 | |||
230Ⅰ | 名誉棄損罪 | ❶公然と | 摘示された事実を不特定又は多数人が認識し得る状態 |
❷事実を摘示 | 「事実」=それ自体として人の社会的評価を低下させ,かつ,事実評価の対象となり得る程度に具体的な事実 | ||
❸人の名誉 | 「人」=自然人+法人その他の団体 「名誉」=人についての事実上の積極的な社会的評価 |
||
❹毀損 | 人の社会的評価を害するおそれのある状態を生じさせたこと | ||
❺故意 | |||
235 | 窃盗罪 | ❶他人の | |
❷財物を | 財産的価値を有する物 | ||
❸窃取 | 占有者の意思に反して,財物を自己又は第三者の占有下に移すこと | ||
❹故意 | |||
❺不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
236 | 強盗罪 | ❶暴行又は脅迫 | 財物奪取に向けられた,人に対する不法な有形力の行使又は害悪の告知であって,その程度が相手方の反抗を抑圧するに足りるもの |
❷他人の | |||
❸財物を | 財産的価値を有する物 | ||
❹強取 | 占有者の意思に反し,反抗抑圧状態を利用して,財物を自己又は第三者の占有下に移すこと | ||
❺故意 | |||
❻不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
238 | 事後強盗罪 | ❶窃盗 | |
❷暴行又は脅迫 | 財物奪取に向けられた,人に対する不法な有形力の行使又は害悪の告知であって,その程度が相手方の反抗を抑圧するに足りるもの | ||
❸窃盗の機会 | 窃盗行為との時間的・場所的接着性 | ||
❹目的 | 財物を得てこれを取り返されることを防ぎ,逮捕を免れ,又は罪証を隠滅するため | ||
❺故意 | |||
❻不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
240前 | 強盗致傷罪 | ❶強盗 | |
❷人を負傷させた | 傷害結果の発生 | ||
❸❷が強盗の機会 | 犯意の継続性及び強盗行為との時間的・場所的接着性 | ||
❹暴行又は脅迫と❷の因果関係 | |||
❺故意 | |||
❻不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
240前 | 強盗傷人罪 | ❶強盗 | |
❷人を負傷させた | 傷害の実行行為・結果 | ||
❸❷が強盗の機会 | 犯意の継続性及び強盗行為との時間的・場所的接着性 | ||
❹暴行又は脅迫と❷の因果関係 | |||
❺強盗の故意 | |||
❻傷害の故意 | 人の生理的機能を害することの認識・認容 | ||
❼不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
240後 | 強盗致死罪 | ❶強盗 | |
❷人を死亡させた | 死亡結果の発生 | ||
❸❷が強盗の機会 | 犯意の継続性及び強盗行為との時間的・場所的接着性 | ||
❹暴行又は脅迫と❷の因果関係 | |||
❺故意 | |||
❻不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
240後 | 強盗殺人罪 | ❶強盗 | |
❷人を死亡させた | 殺人の実行行為・結果 | ||
❸❷が強盗の機会 | 犯意の継続性及び強盗行為との時間的・場所的接着性 | ||
❹暴行又は脅迫と❷の因果関係 | |||
❺強盗の故意 | |||
❻殺人の故意 | 人の死の結果発生に対する認識・認容 | ||
❼不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
244 | 親族相盗例 | ❶配偶者,直系血族又は同居の親族との間で | 「配偶者」…内縁関係の者は含まれない 「親族」=民§725の「親族」の中から「配偶者と直系血族」を除いた「6親等内の傍系血族と3親等内の姻族」 |
❷窃盗罪等の財産犯又はその未遂を犯した | |||
246Ⅰ | 詐欺罪 | ❶詐欺行為 | 財産的処分の判断の基礎となる重要な事項を偽る行為 |
❷❶に基づく錯誤 | |||
❸❷に基づく交付行為 | |||
❹❸に基づく財物の移転 | |||
❺故意 | |||
❻不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
247 | 背任罪 | ❶他人の事務を処理する者 | |
❷任務に違背する行為 | 信任関係に違背して本人に損害を加える行為 | ||
❸財産上の損害 | 経済的見地における損害を評価 | ||
❹故意 | |||
❺図利加害目的 | 自己又は第三者の利益を図る目的/本人に損害を加える目的 | ||
249 | 恐喝罪 | ❶恐喝行為 | 財物交付に向けられた,人を畏怖させるに足りる暴行又は脅迫を加えることであって,その暴行又は脅迫の程度が相手方の反抗を抑圧しない程度のもの |
❷❶に基づく相手方の畏怖 | |||
❸❷に基づく交付行為 | |||
❹❸に基づく財物の移転 | |||
❺故意 | |||
❻不法領得の意思 | 権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思 | ||
253 | 業務上横領罪 | ❶業務上 | 社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務で,他人の委託に基づいて他人の財物を占有・保管することを内容とするもの |
❷自己が占有する | 事実上又は法律上の管理・支配を及ぼしていること | ||
❸委託信任関係 | 財産上の物の保管を目的とする関係 | ||
❹他人の物 | |||
❺横領 | 不法領得の意思の発現行為 | ||
❻故意 | |||
❼不法領得の意思 | 委託の任務に背いて,その物につき権限がないのに,所有者でなければできないような処分をする行為 |
社会的法益に対する罪
* 〔PCのみ〕罪名にマウスオーバーすると,条文が表示されます。* 各構成要件要素に付されている番号が❶,❶'となっているような場合は,それらの構成要件要素が択一的関係であることを示します。
No. | 罪名 | 構成要件 | 意義 |
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108 | 現住建造物放火罪 | ❶放火 | 客体の燃焼を惹起させる行為 |
❷現に人が住居に使用している | 現に人の起臥寝食する場所として日常使用されているもの | ||
❷'現に人がいる | その内部に他人が現実にいること | ||
❸建造物 | 家屋その他これに類する建築物であって,屋根があり,壁又は柱で支持されて土地に定着し,少なくともその内部に人が出入りできるもの | ||
❹焼損 | 火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続し得る状態に達したこと | ||
❺故意 | |||
109Ⅰ | 他人所有非現住建造物放火罪 | ❶放火 | 客体の燃焼を惹起させる行為 |
❷現に人が住居に使用していない | |||
❸現に人がいない | |||
❹建造物 | 家屋その他これに類する建築物であって,屋根があり,壁又は柱で支持されて土地に定着し,少なくともその内部に人が出入りできるもの | ||
❺焼損 | 火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続し得る状態に達したこと | ||
❻故意 | |||
109Ⅱ | 自己所有非現住建造物放火罪 | ❶放火 | 客体の燃焼を惹起させる行為 |
❷❸が自己の所有に係る | |||
❸建造物 | 家屋その他これに類する建築物であって,屋根があり,壁又は柱で支持されて土地に定着し,少なくともその内部に人が出入りできるもの | ||
❹焼損 | 火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続し得る状態に達したこと | ||
❺公共の危険の発生 | 不特定又は多数の人々の生命・身体・財産に対する危険の発生 | ||
❻故意 | ※❺も故意の対象になる | ||
155Ⅰ 158 | 有印公文書偽造罪・同行使罪 | ❶公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用 | |
❷公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画 | 「文書」=文字又は文字に代わるべき符号を用い,永続すべき状態において,物体上に記載された意思又は観念の表示 | ||
❸偽造 | 文書の名義人と作成者の人格の同一性を偽ること | ||
❹行使 | 偽造文書を真正文書若しくは内容の真実な文書として不特定又は多数の者に認識させ又は認識し得る状態に置くこと | ||
❺故意 | |||
❻行使の目的 | 偽造・変造された文書の内容を,多少とも利害関係のある(かつ,情を知らない)相手方に認識させ,又は相手方が認識し得る状態に置く目的 | ||
159Ⅰ 161 | 有印私文書偽造罪・同行使罪 | ❶他人の | 犯人以外の者で,しかも日本国の公務所又は公務員でない者 |
❷印章又は署名 | |||
❸権利義務に関する文書 | 権利又は義務の発生・変更・消滅の法律効果を生じさせることを目的とする文書,並びに権利・義務の存在を証明する文書 | ||
❸'事実証明に関する文書 | 社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書 | ||
❹偽造 | 文書の名義人と作成者の人格の同一性を偽ること | ||
❺行使 | 偽造文書を真正文書若しくは内容の真実な文書として不特定又は多数の者に認識させ又は認識し得る状態に置くこと | ||
❻故意 | |||
❼行使の目的 | 偽造・変造された文書の内容を,多少とも利害関係のある(かつ,情を知らない)相手方に認識させ,又は相手方が認識し得る状態に置く目的 |
国家的法益に対する罪
* 〔PCのみ〕罪名にマウスオーバーすると,条文が表示されます。* 各構成要件要素に付されている番号が❶,❶'となっているような場合は,それらの構成要件要素が択一的関係であることを示します。
No. | 罪名 | 構成要件 | 意義 |
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197Ⅰ前 | 収賄罪 | ❶公務員 | 刑§7Ⅰ |
❷その職務に関し | ・一般的職務権限の範囲内の行為 ・職務密接関連行為 |
||
❸賄賂 | 一定の職務に対する反対給付としての性質のある,不正な報酬としての一切の利益 | ||
❹収受 | 賄賂を受け取ること | ||
❹'要求 | 賄賂の供与を請求すること | ||
❹''約束 | 賄賂者と収賄者との間に賄賂の収受について意思の合致がみられること | ||
❺故意 | ❹時点で客体が賄賂であることの素人的意味の認識があれば足りる | ||
197Ⅰ後 | 受託収賄罪 | ❶公務員 | 刑§7Ⅰ |
❷その職務に関し | ・一般的職務権限の範囲内の行為 ・職務密接関連行為 |
||
❸賄賂 | 一定の職務に対する反対給付としての性質のある,不正な報酬としての一切の利益 | ||
❹収受 | 賄賂を受け取ること | ||
❹'要求 | 賄賂の供与を請求すること | ||
❹''約束 | 賄賂者と収賄者との間に賄賂の収受について意思の合致がみられること | ||
❺請託 | 職務に関し,一定の職務行為を行うことを依頼すること | ||
❻受けたとき | 依頼を承諾したこと | ||
❼故意 | ❹時点で客体が賄賂であることの素人的意味の認識があれば足りる | ||
198 | 贈賄罪 | ❶単純収賄罪等について | |
❷賄賂 | |||
❸供与 | 公務員に賄賂の収受を促すこと | ||
❸'申し込み | 賄賂を供与し,これを収受することについての贈賄者・収賄者間の合意 | ||
❸''約束 | 賄賂を収受させること | ||
❹故意 | ❸時点で客体が賄賂であることの素人的意味の認識があれば足りる |
● 参考文献