【民弁起案】民弁起案の勉強指針

 民弁起案の対策としては,大きくは次の3つが考えられると思います。

① 「民事弁護の手引」等で型を押さえる

 即日起案では,訴状,答弁書,最終準備書面のいずれかの起案が出題されます。司法研修所民事弁護教官室「8訂 民事弁護の手引」141頁以下導入修習で配布される「最終準備書面記載例」に訴状,答弁書,準備書面の記載例があるので,それを参考に起案方法を勉強することができます。

 また,田中豊「法律文書作成の基本〔第2版〕」(日本評論社・2019年)京野哲也「クロスリファレンス民事実務講義〔第2版〕」(ぎょうせい・2014年)等も修習生の間で人気です。

 なお,民弁起案の証拠の引用方法は,ちょっと特殊なので,前掲「最終準備書面記載例」でしっかり押さえておきましょう。

 例えば,証人Aさんの尋問調書の30個目の尋問とそれに対する証言を証拠として引用したい場合は,「(A30)」というように認定事実の後に摘示するというものです。

 前掲記載例等で一通り型を押さえたら,後は,その型に流し込むように,記録中の事実を拾いまくって,評価しましょう。いかにたくさんの記録中の事実を使えるか,そして,いかにたくさんその事実を基礎付ける証拠を引用できるかが良い評価をとれるかどうかの分かれ目になります

 教官も,民弁起案は,記録に埋まっている事実や証拠という宝をいかにたくさん探し出すかという「宝探し」なんだとおっしゃっていました。

 ちなみに,事実認定に関しては,土屋文昭ほか「ステップアップ民事事実認定」(有斐閣・2010年)を教官が激推ししてました笑

 また,経験則を勉強するのに好個の書として,河村浩=中島克巳「要件事実・事実認定ハンドブック〔第2版〕」(日本評論社・2017年)がオススメされていました。

 根本的な思考方法は,民裁と根っこの部分で同じなので,ジレカンで勉強したことは,民弁でも活きます。したがって,ジレカンで学習することは,民弁起案対策にもなります。

 ただし,民弁起案が,当事者の代理人という党派的立場から論ずることが求められるという性質から,一定の事実が認められることを言うにあたっても,「〇〇という事実が推認される。」というようなあたかも第三者的な表現は不適切で,「〇〇という事実が認められることは明らかである。」とか「〇〇という事実が認められると考えられるのが自然である。」などといった当事者目線の表現を用いるのが適切であるなど,一定のふさわしい様式が存在することには注意が必要です。

② 基本的な要件事実の学習

 最低でも司法研修所「改訂 紛争類型別の要件事実」(法曹会・2013年)に記載されている要件事実は勉強しておく必要があると言われています。もちろん同書に記載されている要件事実以外の要件事実も普通に問題になるので,起案対策上,マニアックなものまで学習する必要はありませんが,大島眞一「完全講義 民事裁判実務の基礎〔第3版〕上巻」(民事法研究会・2019年)等で積極的に勉強しておくとよいと思います。

 要件事実が分かっていないと,記録中の事実が何に使えるのか分からず,拾うべき事実を拾えなくなってしまい,その結果,全く点数が入らなくなります。

 類型別等の要件事実を全て記憶しなければならないということではないですが,最低でも,記録を読んで,「ああ,この事実は,あの要件事実に関係する事実だな。」ということが分かり,記録から逆算して要件事実を組み立てられる程度には勉強しておいた方がいいと思います。

③ 導入修習で配布されたレジュメの復習

 民弁起案の小問では,民事執行・保全,証拠収集,和解条項等に関する問題が出題されます。これらはいずれも導入修習で配布されるレジュメに記載されている事項から出題されます。したがって,導入修習で配布されたレジュメは捨てずに大切に保管しておきましょう(民弁のレジュメ,もう少し文字を書き込む余白を設けてくれてたらいいのになぁ…)。

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