【2020年民法改正】公序良俗【勉強ノート】

公序良俗

変更点

旧法 新法
【90条】
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする。
【90条】
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とする。

説明

 「事項を目的とする」との文言が削除されました。

 これは,人身売買等のように法律行為の内容自体が公序良俗に反するものだけでなく,例えば,賭博の用に供することや賭博で負けた債務の弁済に充てるという動機が表示されて行われた金銭消費貸借契約のように,法律行為が行われる過程その他の事情に公序良俗違反があるものについても,その法律行為を無効とすることを条文上も明らかにするためです。

 

公序良俗に反する場合ってどういう場合?

 公序良俗に反する行為類型として,伝統的に,次のような場合が挙げられてきました。もっとも,社会通念等の変化に伴って,それが公序良俗に反するかどうかの判断は変わり得ます。

類型 具体例
犯罪やそれに類する社会的非難の程度が極めて高い行為 ・談合
・村八分
家族秩序,性道徳に反する行為 ・父子間で,成年に達した子が父と離婚した母と同居しないものとし,違約に対して金銭を支払う旨の契約(大判明治32年3月25日)
・愛人関係の解消を条件に金銭を支払う旨の契約(大判大正12年12月12日)
・愛人関係の係属中は返還請求しない旨の消費貸借契約(大判昭和9年10月23日)
個人の自由を極度に制限する行為 ・父が,金貸しと金銭消費貸借契約を締結し,金銭を借りるとともに,その返済方法として,娘に娼婦として働かせ,その報酬額から天引きする旨の稼働契約を当該金貸しと締結すること(最判昭和30年10月7日)
・所有権移転に際して目的物の処分を長期にわたって禁じる契約(大判明治45年5月9日)
・長期にわたって競業避止義務を課して営業の自由を制限する契約(最判昭和44年10月7日)
憲法によって認められている基本的価値に反する法律行為 ・男女で異なる定年退職年齢を定める就業規則(最判昭和56年3月24日)
・一企業に複数の組合が存在するにもかかわらず,ある労働者が,ユニオン・ショップ協定を締結している組合を脱退し,他の組合に加入することを禁ずる合意(最判平成元年12月14日)
暴利行為,著しく不公正な法律行為 ・過大な賠償額の予定(大判昭和19年3月14日)
・過剰な担保を設定させる契約(大判昭和9年5月1日)
・店(雇主)の優越的地位を利用した不公正取引
著しい射倖行為 ・賭金支払に関する和解契約(最判昭和46年4月9日)
・賭金支払のために譲渡された小切手金の支払請求(最判昭和46年4月9日)
法律行為をする動機に不法性がある場合(動機の不法) ・賭博債務の弁済や賭金に充てることを目的とする金銭消費貸借契約(大判昭和13年3月30日,最判昭和61年9月4日)

佐久間毅「民法の基礎1 総則〔第3版〕」(有斐閣・2008年)196~198頁)

確認問題〔公序良俗〕

「公序良俗」に関する問題を出題します(全1問)。

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