手付に関しては,専ら判例や実務の運用を踏まえた改正なので,今回の改正が実務への影響は少ないと考えられます。
ただし,相手方が履行に着手するまでは手付解除できると明文化されたことにより,手付解除の相手方に不測の損害を与えることが増える可能性もあると指摘されています。
手付
旧法 | 新法 |
【557条】(手付) 2項:第五百四十五条第三項の規定は,前項の場合には,適用しない。 |
【557条】(手付) 2項:第五百四十五条第四項の規定は,前項の場合には,適用しない。ただし,その相手方が契約の履行に着手した後は,この限りでない。 |
「倍額を償還」の見直し
新法では,判例(最判平成6年3月22日)を踏まえ,売主の手付倍戻しによる解除は,倍額につき現実の償還までは要せず,倍額を現実に提供をすれば足りる旨変更されました(新法§557Ⅰ)。
「契約の履行に着手」の見直し
新法では,判例(最判昭和40年11月24日)を踏まえ,手付解除をしようとする者が履行に着手していたとしても,履行に着手していない当事者に対して契約の解除をすることができ,手付解除が制限されるのは,あくまで解除しようとする者の「相手方が契約の履行に着手した後」である旨明記されました。
また,旧法では,解除者の相手方の履行着手後は手付解除が制限されることは旧法§557Ⅰ中に規定されていましたが,新法では,これを新法§557Ⅱ但書に移設しました。
これにより,手付解除の有効性を争う相手方が履行の着手をしたことについて主張立証責任を負うことが明らかになりました。
確認問題
特になし。