懸賞広告者の報酬付与義務
旧法 | 新法 |
【529条】(懸賞広告) ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下この款において「懸賞広告者」という。)は,その行為をした者に対してその報酬を与える義務を負う。 |
【529条】(懸賞広告) ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下「懸賞広告者」という。)は,その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず,その者に対してその報酬を与える義務を負う。 |
旧法下では,懸賞広告を知らずにその広告で指定された行為をした者に対しても懸賞広告者が報酬付与義務を負うか否かについて,旧法§529の規定上,明らかでなく争いがありましたが,新法では,懸賞広告を知らずにその広告で指定された行為をした者に対しても懸賞広告者は報酬付与義務を負うとしました(新法§529)。
指定行為をした者が懸賞広告を知らなかった場合であっても,指定行為がなされたのであれば,客観的には懸賞広告者の期待が実現されており,懸賞広告者に報酬付与義務を負わせても不当ではないからです。
指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告の撤回・効力
旧法 | 新法 |
【530条】(懸賞広告の撤回) |
【529条の2】(指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告) 2項:前項の広告は,その期間内に指定した行為を完了する者がないときは,その効力を失う。 |
懸賞広告の撤回
旧法§530では,「懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは,その撤回をする権利を放棄したものと推定する。」と定められていました。
懸賞広告に応じて指定された行為をしようとする者の信頼を保護するためです。
しかし,このような推定規定の場合,撤回権を留保する表示をしていなくとも,懸賞広告者が撤回権を放棄する意思を有していなかったことの反証に成功すれば,撤回が認められてしまうので,かえって懸賞広告に応じて指定行為をしようとする者の信頼が害されてしまいます。
そこで,新法では,懸賞広告者は,原則として,その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができないけれども,例外的に,その広告において撤回権を留保した場合は撤回することができるとし,撤回の余地を残したいときは,撤回権を留保する旨の明確な表示を懸賞広告者に要求することとしました(新法§529の2Ⅰ)。
懸賞広告の効力
旧法では,懸賞広告について,懸賞広告者が,その指定した行為をする期間を定めたけれども,その期間内に誰も指定行為を完了させなかったときの当該広告の効力について定めた規定は特に存在しませんでした。
そこで,新法では,一般的な解釈に従い,指定行為をする期間の定めのある懸賞広告は,その期間内に指定した行為を完了する者が現れない場合,無効になる旨の規定が新設されました(新法§529の2Ⅱ)。
懸賞広告の撤回の方法
旧法 | 新法 |
【530条】(懸賞広告の撤回) 2項:前項本文に規定する方法によって撤回をすることができない場合には,他の方法によって撤回をすることができる。この場合において,その撤回は,これを知った者に対してのみ,その効力を有する。 3項:(省略) |
【530条】(懸賞広告の撤回の方法) 2項:広告の撤回は,前の広告と異なる方法によっても,することができる。ただし,その撤回は,これを知った者に対してのみ,その効力を有する。 |
広告の撤回が前の広告と同一の方法で行われる場合
新法では,一般的な解釈に従い,前の懸賞広告と同一の方法による懸賞広告の撤回は,これを知らない者に対しても,有効である旨の規定が新設されました(新法§530Ⅰ)。
広告の撤回が前の広告と異なる方法で行われる場合
また,旧法§530では,懸賞広告の撤回は,原則として,前の懸賞広告と同一の方法によることとされ,例外的に,同一の方法によることができない場合に限り,他の方法によることが認めていました。
懸賞広告の相手方の信頼を保護するためです。
しかし,懸賞広告の撤回が前の懸賞広告とは別の方法によって行われたことを知らない者との関係でのみ,その撤回を無効なものと取り扱うことにすれば,懸賞広告の相手方の信頼が害されることはありません。
そこで,新法§530Ⅱでは,撤回の方法は懸賞広告者が自由に選択することができますが,前の広告と異なる方法によって撤回をする場合,そのことを知った者との関係でのみ有効であることとされました。
確認問題
特になし。