使用貸借の成立要件
旧法 | 新法 |
【593条】(使用貸借) 使用貸借は,当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。 |
【593条】(使用貸借) 使用貸借は,当事者の一方がある物を引き渡すことを約し,相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって,その効力を生ずる。 |
本改正においては,旧法下では要物契約とされていた使用貸借を諾成契約に改め,目的物引渡し前の使用貸借の合意に法的拘束力を与えました(新法§593)。
使用貸借は,親族間等の情義的な関係の中で利用されるだけでなく,経済的な取引の一環として利用されることもあるため,目的物が引き渡されるまで何らの契約上の義務も発生しないというのでは取引の安全が害されてしまいます。
そこで,新法では,目的物引渡し前の使用貸借の合意に法的拘束力を認めることにしたのです。
借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除
旧法 | 新法 |
規定なし | 【593条の2】(借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除) 貸主は,借主が借用物を受け取るまで,契約の解除をすることができる。ただし,書面による使用貸借については,この限りでない。 |
前述のとおり,使用貸借が諾成契約とされたことによって,安易な口約束でも使用貸借が成立させることができるようになりました。
しかし,使用貸借は無償契約に過ぎないので,契約の拘束力を一定の場合に緩和し,貸主の利益と借主の利益の調整を図る必要があります。
そこで,新法では,貸主は,借主が借用物を受け取るまでであれば,使用貸借の合意が書面による場合を除き,契約の解除をすることができる旨の規定を新設しました(新法§593の2)。
使用貸借が書面で行われた場合には,通常,使用貸借の合意が慎重になされたと考えられるので,貸主に解除の余地を与えていません。
なお,ここでいう「書面」には,使用貸借の詳細な内容まで具体的に記載されている必要はないですが,目的物を無償で貸す旨の貸主の意思が現れていなければならないとされています。
要件事実
確認問題
特になし。