【2024年1月更新】始めたい事業に関係する法規制の調べ方

 事業を立ち上げたものの、その事業がある法規制に抵触している場合、行政処分や刑事罰の対象となったり、当該事業を継続することが困難になることがあります。

 また、将来、資金調達や上場、事業の売却をしたいと考えたときに障害になってしまうおそれがあります。

 しかし、その事業にいかなる法規制が適用されるかを把握することは容易ではありません。

 そこで、本稿では、新しく始めようとする事業に関係してくる法規制を効率的に調査するための方法について説明します。

関係しそうな法規制の発見

 まず、総務省が公開している「許認可等の統一的把握結果」を参照することが挙げられます。ただ、いかんせん量が膨大なので、探すのが大変です。また、ここに掲載されている法令以外でも、他にも検討しなければならない法令があることが通常です(例えば、商標の取得等)。

 そこで、次のような方法をとることも考えられます。

  • J-Net21の「業種別開業ガイド」を参照する。多種多様な業種・職種の開業に必要な情報を参照することができる。
  • きんざいの「業種別審査事典」を参照する。多種多様な業種・職種の関連法規制、特色、業界動向等を参照することができる。
  • 始めようとする事業に関連する業界団体が存在する場合には、その業界団体が定めている自主規制やガイドライン等を参照する。
  • 詳しい人へのヒアリングや、書籍やインターネット等での調査を通して、同種の他社事例の有無を探し、公表事例を調査する。

 そして、同種の他社事例が見つかり、当該企業が上場企業である場合は、その有価証券届出書有価証券報告書の「事業等のリスク」、臨時報告書に添付される英文目論見書の「Regulation」を参照することも有効です。有価証券届出書や有価証券報告書は、各企業のホームページにあるIRページや金融庁が開設しているEDINETから閲覧することができます。

法規制への抵触の調査

 以上のプロセスを経て、関係しそうな法規制が見つかった場合には、次に始めようとする事業にその法規制が適用されるかどうかを調査することになります。

 法令等に書いてあることは分かりづらいことが多く、正直、読んでもよく意味が分からないことが多いと思います。

 仮に読み解けても、ある文言が抽象的で自社の事業に当てはまるのかどうかよく分からないことも多いと思います。その文言の解釈は別途裁判例や通達等を参照しなければならないので、膨大な情報の海の中からそれらを探すのも大変です。

 さらに、法令の規定の詳細が別途施行令や施行規則等で定められていることもあります。

 新しいことを始めようとしているならもちろん、そうでなくとも、その分野の専門家でもない限り、やろうとしている事業に適用される法規制を洗い出すのはとても難しいことなのです。

 したがって、ある程度調査して、おおよその見立てがついた段階で次の方法をとるとよいです。

  • 監督官庁への対面や電話等での照会
  • ノーアクションレター制度
  • グレーゾーン解消制度
  • 弁護士等の専門家への相談

(1) 監督官庁への照会

 まずは監督官庁への対面や電話等での照会から行うのがよいでしょう。

 ただし、前例のないビジネス等、明確に判断することが難しいケースでは、保守的・消極的な回答がなされることもあります。したがって、そのような場合には、専門の弁護士に相談し、監督官庁への照会の場に弁護士に同席してもらったり、意見書を作成してもらうなどの対策をとることが考えられます。

(2) ノーアクションレター制度の概要

 ノーアクションレター制度とは、立ち上げた事業が法令に基づく許認可等を受ける必要があるかどうか等について行政機関に回答を求める制度です。

 照会を求める法令の条項ごとに定められた窓口に照会書を提出することによって照会を行います。

 監督官庁から回答がなされるまでの目安の期間は照会書提出から1ヶ月以内です。

 ノーアクションレター制度は、照会可能な法令が許認可に関する条項等に限定されていること、手続的に煩雑であること、照会者名・照会内容・回答内容が公表されてしまうことなどのデメリットがあります。

(3) グレーゾーン解消制度の概要

 次に、グレーゾーン解消制度とは、新事業の事業者が現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても安心して事業を行えるよう監督官庁に対し具体的な事業計画に即してあらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。

 監督官庁から回答がなされるまでの目安の期間は照会から1ヶ月以内です。

 グレーゾーン解消制度も照会時に照会を求める条項等を具体的に特定しなければならない点はノーアクションレター制度と同様ですが、同制度ほど手続が煩雑でなく、同制度と違い、事業者名が公表されないなどのメリットがあります。

 また、グレーゾーン解消制度に基づき申請を行う前に監督官庁に事前相談を行うことができ、その際に監督官庁が事業者が見落としている法規制を指摘してくれる場合もあります。

 なお、申請案件の回答内容が関係省庁のウェブサイトで公表されているので、ご自身が始めようとしている事業と同じ事業や類似する事業がないかを確認してみるのもよいでしょう。

(4) 弁護士等の専門家への相談

 ご自身が取り扱う事業の分野について詳しい弁護士に相談することもオススメです。

 弁護士に調査を依頼した場合、それなりの費用がかかるので、費用との相談ですが、重要な事業については、ある程度ビジネスモデルが固まっているのであれば、その段階で弁護士に投げてしまうのもアリです。

 どの弁護士がご自身の事業分野に関して詳しいか分からないという方は、当職において、対応の可否を含め、ご相談に乗らせていただくことができますので、下記お問合せフォームから是非お気軽にご相談ください。

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