本稿のテーマ
創業準備期又は創業期は会社が,保有する個人情報を保護するために執るべき安全管理措置の水準はどのようなものでしょうか。
自社内で取り扱う個人データ[1]に関する安全管理措置の方針
基本方針の策定,規律の整備,組織的安全管理措置,人的安全管理措置,物理的安全管理措置,技術的安全管理措置の6つの観点から,安全管理措置を整備します。
以下は,現時点において中小規模事業者[2]として最低限執ることが求められる安全管理措置の水準を示しておりますが,事業拡大を企図するのであれば,早期段階から,一般的な個人情報取扱事業者に求められる水準を意識して準備を行うことが望ましいです[3]。
基本方針(プライバシーポリシー)の策定 |
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規律の整備 |
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組織的安全管理措置 |
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人的安全管理措置 |
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物理的安全管理措置 |
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技術的安全管理措置 |
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[1] 個人情報をデータベース化等して管理する場合,その個人情報は,個人情報保護法上,「個人データ」として取り扱われ,個人情報取扱事業者に一層高度な義務が課せられることになる。
[2] 「中小規模事業者」とは,従業員の数が100人以下の個人情報取扱事業者をいう。ただし,①その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数の合計が過去6月以内のいずれかの日において5,000を超える者や②委託を受けて個人データを取り扱う者は,「中小規模事業者」には当たらない。こうした「中小規模事業者」の定義によれば,委託先の企業は,規模の大小にかかわらず,中小規模事業者の緩和された安全管理措置水準ではなく,一般的な水準が要求されていることに注意を要する。
[3] 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」86頁以下において,具体例を挙げて詳細に紹介されている。
外部事業者に個人データの取扱いを委託する場合の留意点
自社で個人データを管理することが難しいため,外部事業者に管理を委託することもあるでしょう。
その場合は,その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう,委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行う必要があります。
具体的には,
①適切な委託先の選定
②委託契約の締結
③委託先における個人データ取扱状況の把握
を行い,委託先において,自社が法令等上要求されている安全管理措置の水準以上の安全管理措置が施されていることを確保することが必要です。
個人データの漏洩等が発生した場合における対応
個人データが漏洩,滅失又は毀損した場合に備え,あらかじめ対策を講じておく必要があります。概ね以下の観点に基づき,対策を講じます。
①事業内部における報告及び被害の拡大防止
②事実関係の調査及び原因の究明
③影響範囲の特定
④再発防止策の検討及び実施
⑤影響を受ける可能性のある本人への連絡等
⑥事実関係及び再発防止策等の公表
⑦個人情報保護委員会等への報告
その他の留意点
個人データを6か月を超えて保有すると,「保有個人データ」として,個人情報取扱事業者に一層高度の義務が課せられることになるため,6か月以上保有する必要がない個人データについては,不要になった時点で削除することが望ましいです。
結び
以上,創業準備期又は創業期の会社が目指すべき安全管理措置の水準を示しましたが,いきなり全て実現しようとする必要はなく,少しずつでよいので,上記水準を満たすように整備していってください。
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