改正の骨子
※ 議決権行使書面と代理権を証明する書面(委任状)とで同様の改正が行われているため、特に断りがない限り、以下、両者を併せて「議決権行使書面等」としてまとめて説明を行います。
拒絶事由
本改正では、議決権行使書面等の閲覧・謄写の請求について、その濫用を防止するため、株主名簿閲覧等請求の拒絶事由と同様の拒絶事由が新たに規定されました(改正法§311Ⅴ,§312Ⅵ, §310Ⅷ)。具体的には次のような場合に株主からの議決権行使書面等の閲覧等の請求を拒むことができます。
拒絶事由 | 具体例等 | |
① | 請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき | 例)株主が自己の商品についてダイレクトメールを送る目的で議決権行使書面等の閲覧等の請求を行ったとき |
② | 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき | 例)株主が不必要に相次いで議決権行使書面等の閲覧等の請求を行ったとき |
③ | 請求者が第一項の規定により提出された議決権行使書面等の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき | 例)株主が名簿業者等に情報を売却するために議決権行使書面等の閲覧等の請求を行ったとき |
④ | 請求者が、過去2年以内において、第一項の規定により提出された議決権行使書面等の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき | 例)株主が、過去2年以内において、議決権行使書面等の閲覧等によって知り得た事実を名簿業者等に売却したことがあるとき |
竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)238~239頁に基づき作成
理由明示
さらに、株式会社に拒絶事由該当性に係る判断資料を提供するため、株主が議決権行使書面等の閲覧等の請求を行うにあたっては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならないこととされました(改正法§311Ⅳ後段,§312Ⅴ後段, §310Ⅶ後段)。
経過措置
以上の規律は、改正法の施行後にされた議決権行使書面等の閲覧等の請求について適用されます(改正法附則§4)。
対応必要事項(対応優先度・必要性:中)
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