現行法上、新株予約権を発行した株式会社は、当該新株予約権について払込金額又はその算定方法を定めたときは、当該事項を登記しなければならないこととされています(現行法§911Ⅲ⑫ニ・§238Ⅰ③)。
そして、募集新株予約権について、払込金額ではなく、その算定方法を定めた場合は、登記申請時までに払込金額が確定したとしても、その算定方法を登記しなければならないと解されています。
しかし、募集新株予約権の払込金額の算定方法は詳細かつ抽象的な数式等で表されることが多く、これを登記することは事務処理上の負担になっている一方、募集新株予約権の払込金額の算定方法は、直接、資本金の額に影響を与えるものではないため、新株予約権の発行段階から登記事項として公示する実益が乏しいなどと指摘されていました。しかし、払込金額に関連する事項を登記事項として公示することは、新株予約権の発行に関する透明性を確保し、また、新株予約権の発行の無効の訴えや関係者に対する責任追及を行うにあたっての判断資料となるため、新株予約権の払込金額の算定方法を登記する必要性を否定することはできません[1]。
そこで、本改正では、募集新株予約権について、改正法§238Ⅰ③に掲げる事項として募集新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合であっても、登記申請時までに払込金額が確定しない場合を除き、払込金額を登記すればよいこととされました(改正法§911Ⅲ⑫ヘ)。
この規律は、改正法の施行日以後に登記申請がなされた新株予約権の発行に関する登記の登記事項に及びます(改正法附則§9)。
[1] 竹林俊憲『一問一答 令和元年改正会社法』(商事法務・2020年)243頁。
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