久しぶりの更新です。
あまり記事の冒頭とかで雑談を挟むことはないのですが、今回は少し喋らせてください。
私は、今年の3月より企業から法律事務所に移籍したのですが、実際に取り扱う業務内容が全く違うものでして、例えば、当サイトでは、令和元年会社法改正について取り上げてきましたが、現職の業務では、会社法改正の「か」の字も出てこないわけですよ。
それで、当サイトの記事の方向性って概ね前職の業務内容に沿っていたので、現職の業務内容と当サイトの内容が全く合わなくなっちゃったわけなんですよね。
私、3ヶ月くらい、このサイトをどうしようかって悩んでたわけです。
それで、悩み抜いた末、決めました!
基本的にこのサイトの方向性は大きくは変えません。これまで同様、企業法務の枠内で法令改正とか重要論点とかについて色々書いていきます。
ただ、これまでみたいに特定のトピックについて体系的に記事を書いてくかどうかは分かりません。
しばらくはそのときどきで興味のあるトピックについて、検討したりしたいなと思っています。
そんな感じでこれからもゆる~くやっていくので、末永いお付き合いをどうぞよろしくお願い申し上げます。
会社法299条1項の読み方
会社法299条1項は、株主総会招集通知の発送期限を定めています。
” 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。 ”
以下では、公開会社を例に説明しますが、例えば、定時株主総会が20ⅩⅩ年6月20日に開催される場合は、いつまでに招集通知を発送しなければならないのでしょうか。
結論的には、20ⅩⅩ年6月5日までに招集通知を発送する必要があります。
「あれ?株主総会開催日の2週間前までに発送なんだから、20ⅩⅩ年6月6日に発送すればいいんじゃないの?」って思った方いませんか。
私も以前そのように誤解していましたが、そうではないんです。
会社法299条1項は、「株主総会開催日と招集通知の発送日を算入せず、両者の間に2週間以上の期間を空ける必要がある」という風に読む必要があります。
すなわち、会社法299条1項の「二週間」というのは、「中二週間」を意味するということです。
会社法299条1項の趣旨は、株主に出席と準備の機会を与えることにあるため、株主に有利な解釈が採用されています(大判昭和10年7月15日民集14巻1401頁)。
そういうわけで、株主総会の招集通知は、遅くとも20ⅩⅩ年6月5日までには発送しなければならないということになります。
書面投票等を行う場合
ところが、この話はまだ終わりません。
書面投票や電子投票を行う会社の場合は、株主総会開催日よりも前の日であって、招集通知を発送した日から2週間経過した日以後に書面投票等の締切日を設定しなければならないこととされているのです(会社法施行規則63条3号ロ・ハ)。
書面投票等の締切日は、通常、株主総会開催日の前日に設定されることが多いですが、その場合だと、20ⅩⅩ年6月4日までに招集通知を発送しておかないと、適切に書面投票等の締切日を設定できなくなってしまいます。
仮に20XX年6月5日に招集通知を発送してしまうと、それから「2週間経過した日以後」に書面投票等の締切日を設定する必要があるので、どんなに早くても20XX年6月20日よりも前に書面投票等の締切日を設定することができず、株主総会開催日と重なってしまい、不適法となります。
したがって、書面投票等を行う会社については、株主総会開催日と招集通知発送日を算入せず、両者の間に少なくとも15日以上の期間を空ける必要があるということになります。
議決権を行使できる株主数が1,000名以上いる会社は、原則として、書面投票を行うことが義務付けられているため、特に注意が必要です。
なお、会社法299条1項は発信主義を採用しているため、招集通知は6月4日までに「発送」すればよく、同日時点で株主のもとに届いている必要はありません。
おわりに
以上が法律の建付けとなります。
もっとも、コーポレートガバナンス・コード等でも要請されていますが、近年、株主との対話充実の観点から、招集通知の早期発送が求められています。
この要請に応えなかったからといって、直ちに何らかのペナルティがあるわけではありませんが、こうした時代の潮流が法律の在り方にも影響をもたらす可能性があるため、頭の片隅に入れておく必要があります。
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