司法修習72期の二回試験
司法修習72期の二回試験では以下の分野に関する問題が出題されました。
民事裁判
売買契約,債権譲渡,合意解除,詐欺取消しを主なテーマとした事例が出題されました(設問用紙1頁,記録頁数:106頁)。
設問1 訴訟物とその個数,併合態様
設問2 主張整理
小問(1) 主要事実の摘示
小問(2) 争点の摘示
※ 設問2以下では,附帯請求に関する検討は不要。
設問3 法定追認に関する主張を撤回した理由を論じさせる問題
設問4 事実認定
売買契約の成否に関する事実認定。
※ 事実認定を行うのは,「請求原因事実の中で」争いのある主要事実に限定されていました(筆者は,この指示を読み落とし,ほとんど紙幅・時間は割かなかったものの,抗弁・再抗弁の争点についても検討してしまいました)。
刑事弁護
住居侵入・強盗致傷被告事件において,犯人性が争われた事例が出題されました(設問用紙1頁,記録頁数:76頁)。
設問1 想定弁論(答案指定枚数15枚程度)
設問2 被害者証言の証明力を判断する上で重要な証拠に関する類型証拠開示請求(答案指定枚数1枚以内)
設問3 検察官が不同意とした弁護人請求報告書に代わる証拠とそれを証拠請求することが相当な理由(答案指定枚数1枚以内)
設問4 被害者の反対尋問において獲得すべき重要事項とそれが重要と考える理由(答案指定枚数1枚以内)
※ 答案指定枚数が「〇枚程度」であれば,多少の枚数超過は許容。「〇枚以内」であれば,枚数超過は不可。
刑事裁判
殺人被告事件において,認識型殺意の有無と過剰防衛における「急迫不正の侵害」の有無が争われた事案が出題されました(設問用紙3頁,記録頁枚数:第1分冊12頁,第2分冊52頁)。
設問1 証拠調べ前の段階で,間接事実の推認力を検討させた上,その間接事実が推認力をもつようにするためには,どのように間接事実を再構成すべきかを論じさせる問題(答案指定枚数5枚程度)
設問2 保釈の許否(答案指定枚数5枚程度)
設問3 証拠の採否(伝聞性,必要性)(答案指定枚数3枚程度)
設問4 「殺意の有無」,「急迫不正の侵害の有無」に関する事実認定又は法的評価起案(答案指定枚数12枚程度)
※ 答案指定枚数が「○枚程度」と指定されている場合,多少の枚数超過は許容。
なお、決して真似はしないでいただきたいのですが、設問4に関し、「答案指定枚数12枚程度」の指定にもかかわらず、筆者は33枚書きましたが、不可になっていません(教官に駄文を長々と読ませ、多大なるご負担をかけてしまったこと、お詫び申し上げます)。今後、大幅な枚数超過により不可にならない保証はないので、気休め程度ですが、万一相当程度枚数超過しても、過度に心配する必要はないかと思います。
検察
送致罪名が強盗殺人罪(単独犯)の事例が出題されました(設問用紙1頁,記録頁数:第1分冊120頁,第2分冊52頁)。
※ 第2分冊は,「検察講義案」の写し
第1問 公訴事実,罪名及び罰条
※ 求刑意見は不要
第2問 犯人性,構成要件該当性等
※ 情状は不要
第3問 伝聞性(答案2枚目安)
民事弁護
保証契約に基づく保証債務履行請求とその履行遅滞に基づく損害賠償請求に,賃貸借契約に基づく賃料等支払請求とその履行遅滞に基づく損害賠償請求が追加的変更された事案が出題されました(設問用紙7頁,記録頁数:第1分冊68頁,第2分冊58頁)。
※ 第1分冊は主張書面・尋問関係
※ 第2分冊のうち44頁目までが書証関係,その余が弁護士職務基本規程
第1問 被告代理人の立場で最終準備書面起案
第2問 民事保全・執行に関する小問10題
※ 空欄補充
第3問 証拠収集方法に関する小問8題
※ 空欄補充
※ 7問目は60字以内,8問目は90字以内の比較的長めの文章で回答
第4問 和解条項に関する小問8題
※ 空欄補充,和解条項の文言の暗記
第5問 弁護士倫理に関する小問2題(答案指定枚数各1枚以内)
その他の参考情報
答案用紙35枚,草稿用紙3枚(A4サイズ),10枚の付箋2組(水色のものと黄色のもの)が試験開始前に配布されます。いずれもおかわり自由です。また,「デイリー六法」も貸与されます(もちろん判例は付いていませんが,司法試験等用法文のように関連条文や索引が削除されていたりはしません)。
これらのものは試験終了後に全て回収されます。
二回試験を振り返って
確かに,検察起案の事例が親族相盗例の適用場面であったり,民弁起案の事例で会社§908Ⅰに関する主張がされるなど,面食らった問題もありました。
しかし,全体的にみれば,それほど奇を衒った問題は出題されておらず,二回試験対策として最も重要なのは,導入修習等での講義と即日起案の復習だと思わせる内容でした。
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