はじめに
私はこれまで民法改正(2020年4月1日施行)の概要を説明する記事を投稿してきました。
私は民法改正の記事を書く際,様々な書籍に目を通します。
本稿では,その中でも,私が民法改正の勉強をする中で特に役に立っていると思った書籍を役割ごとに紹介したいと思います。
改正民法全体を効率的に学習するための1冊
民法改正全体を効率的に学習したい方は,筒井健夫=松村秀樹「一問一答 民法(債権関係)改正」(商事法務・2018年)。
これを選んでおいて間違いないです。最初の1冊を挙げるならば,これ!
私自身,まず一問一答から勉強を始め,もっと詳しく知りたいことが出てきた場合に,以下で紹介するような書籍を紐解くという風に勉強していました。
ただ,一問一答は効率的に要点を押さえることができる反面,具体的な適用場面への言及は最小限です。
そこで,事例に基づいて具体的な適用場面をイメージしながら,じっくり勉強したいという方には,潮見佳男編著「Before/After 民法改正」(弘文堂・2017年)がオススメです!
短時間で改正のポイントを効率的に押さえたい方は前者,改正事項が一体どのような場面で活きるのかを知りたい方は後者とざっくり分類することができるかもしれません。
ただ,どちらを選んでも失敗ということはないので,好み・直感で選んじゃいましょう!
実務への影響を満遍なく把握するための1冊
今回の民法改正によって実務にどのような影響が及ぶのかを満遍なく知りたい方には,日本弁護士連合会「実務解説 改正債権法」(弘文堂・2017年)がオススメ。
改正事項全般について,その改正によって,実務に影響をもたらすのか否か,もたらすとしてどのような影響がもたらされるかが説明されており,改正の意義を知ることができるため,実用性の高い1冊です!
改正民法下の要件事実を学ぶための2冊
改正によって要件事実がどのように変わるかを学びたい方には,伊藤滋夫編著「新民法(債権関係)の要件事実Ⅰ」(青林書院・2017年),伊藤滋夫編著「新民法(債権関係)の要件事実Ⅱ」(青林書院・2017年)の2冊がオススメ!
本書は,裁判官や弁護士といった第一線で活躍する実務家による共著であり,改正経緯や改正内容等について説明されています。
本書の類書と比較した強みは,網羅的に改正民法の要件事実について説明されていることであり,痒い所に手が届くという表現が合う書籍です。
理論面を詳しく知りたい方のための2冊
改正経緯や理論面まで詳しく知りたい方には,潮見佳男「新債権総論Ⅰ」(信山社・2017年),潮見佳男「新債権総論Ⅱ」(信山社・2017年)をオススメします!
本書の著者の潮見先生は,法制審議会民法(債券関係)部会のメンバーとして民法改正の議論を牽引されました。
本書では,著者である潮見先生のご見解が前面に押し出されている箇所は多々ありますが(そもそもそういう本),改正民法の理論面の非常に深いところまで掘り下げて論じられており,本書を通して学ぶことで改正民法の深い理解が得られます。
改正民法について勉強する中で,容易に解決することができない難問にぶち当たった場合は,本書に当たってみるとよいでしょう。
契約実務への影響を学ぶなら,まずはこれ!
契約書審査を改正民法に対応させたいとお考えの場合,まずは「滝琢磨「契約類型別 債権法改正に伴う契約書レビューの実務」(商事法務・2019年)」!
五大法律事務所の一角であるTMI総合法律事務所から出されている本であり,著者代表の滝琢磨弁護士は多くの民法改正に関する本を執筆されています。
実際の契約書をサンプルにして,それが今回の民法改正でどのように修正していけばよいのかが説明されており,具体的な修正イメージが一目で分かるため,とても分かりやすいです。
そして,重要な契約類型をカバーし,それぞれについて詳細に説明されているため,まずは本書でどのように契約書案を修正すべきかを学び,もっと詳しく知りたい場合に個別の契約類型を取り扱った解説書を手に取るというのがよいと思います。
おわりに
本稿では,民法改正全体を学習するのに資するであろうと考える書籍を独断と偏見で選出し,紹介させていただきました。
以上挙げたもの以外にも,時効,定型約款,売買契約等の個別の分野に特化して著され,特定分野の理解を深めるのに資する書籍等,優れた書籍はたくさんあります。
そうしたものも追々紹介していけたらなと思います。
✥ 売買基本契約に関する改正事項をスピーディに掴めるオススメの書籍
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