改正会社法(2021年3月1日施行)改正条文

 本稿では,2019年12月11日に公布された改正会社法の改正条文を掲載しています。

 改正会社法を勉強する際に是非ご活用ください。

 改正のあった箇所に下線を引いております。

第一編 総則(§1~§24)

第一章 通則

(定義)
第二条
 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。

(中略)

三十二の二 株式交付 株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第七百七十四条の三第二項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け,当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。

(以下略)

第二章 会社の商号~第四章 事業の譲渡をした場合の協業の禁止等

 改正された条文はありません。

第二編 株式会社(§25~§574)

第一章 設立

第三十九条 設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には,設立時取締役は,三人以上でなければならない。
2 設立しようとする株式会社が監査役会設置会社である場合には,設立時監査役は,三人以上でなければならない。
3 設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には,設立時監査等委員である設立時取締役は,三人以上でなければならない。
4 第三百三十一条第一項(第三百三十五条第一項において準用する場合を含む。),第三百三十三条第一項若しくは第三項又は第三百三十七条第一項若しくは第三項の規定により成立後の株式会社の取締役(監査等委員会設置会社にあっては,監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役),会計参与,監査役又は会計監査人となることができない者は,それぞれ設立時取締役(成立後の株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては,設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役),設立時会計参与,設立時監査役又は設立時会計監査人(以下この節において「設立時役員等」という。)となることができない。
5 第三百三十一条の二の規定は,設立時取締役及び設立時監査役について準用する。

第二章 株式

(取締役の報酬等に係る募集事項の決定の特則)
第二百二条の二
 金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は,定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従いその発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をするときは,第百九十九条第一項第二号及び第四号に掲げる事項を定めることを要しない。この場合において,当該株式会社は,募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 取締役の報酬等(第三百六十一条第一項に規定する報酬等をいう。第二百三十六条第三項第一号において同じ。)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり,募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第百九十九条第一項第三号の財産の給付を要しない旨
二 募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
2 前項各号に掲げる事項を定めた場合における第百九十九条第二項の規定の適用については,同項中「前項各号」とあるのは,「前項各号(第二号及び第四号を除く。)及び第二百二条の二第一項各号」とする。この場合においては,第二百条及び前条の規定は,適用しない。
3 指名委員会等設置会社における第一項の規定の適用については,同項中「定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定め」とあるのは「報酬委員会による第四百九条第三項第三号に定める事項についての決定」と,「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」とする。

(募集株式の申込み及び割当てに関する特則)
第二百五条
 前二条の規定は,募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には,適用しない。
2 前項に規定する場合において,募集株式が譲渡制限株式であるときは,株式会社は,株主総会(取締役会設置会社にあっては,取締役会)の決議によって,同項の契約の承認を受けなければならない。ただし,定款に別段の定めがある場合は,この限りでない。
3 第二百二条の二第一項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には,定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定めに係る取締役(取締役であった者を含む。)以外の者は,第二百三条第二項の申込みをし,又は第一項の契約を締結することができない。
4 前項に規定する場合における前条第三項並びに第二百六条の二第一項,第三項及び第四項の規定の適用については,前条第三項及び第二百六条の二第一項中「第百九十九条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては,その期間の初日)」とあり,同条第三項中「同項に規定する期日」とあり,並びに同条第四項中「第一項に規定する期日」とあるのは,「割当日」とする。
5 指名委員会等設置会社における第三項の規定の適用については,同項中「定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号に掲げる事項についての定め」とあるのは「報酬委員会による第四百九条第三項第三号に定める事項についての決定」と,「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」とする。

(株主となる時期等)
第二百九条
 募集株式の引受人は,次の各号に掲げる場合には,当該各号に定める日に,出資の履行をした募集株式の株主となる。
一 第百九十九条第一項第四号の期日を定めた場合 当該期日
二 第百九十九条第一項第四号の期間を定めた場合 出資の履行をした日
2 募集株式の引受人は,第二百十三条の二第一項各号に掲げる場合には,当該各号に定める支払若しくは給付又は第二百十三条の三第一項の規定による支払がされた後でなければ,出資の履行を仮装した募集株式について,株主の権利を行使することができない。
3 前項の募集株式を譲り受けた者は,当該募集株式についての株主の権利を行使することができる。ただし,その者に悪意又は重大な過失があるときは,この限りでない。
4 第一項の規定にかかわらず,第二百二条の二第一項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には,募集株式の引受人は,割当日に,その引き受けた募集株式の株主となる。

(一に満たない端数の処理)
第二百三十四条
 次の各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の株式を交付する場合において,その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは,その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては,これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し,かつ,その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。
一 第百七十条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主
二 第百七十三条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主
三 第百八十五条に規定する株式無償割当て 当該株式会社の株主
四 第二百七十五条第一項の規定による新株予約権の取得 第二百三十六条第一項第七号イの新株予約権の新株予約権者
五 合併(合併により当該株式会社が存続する場合に限る。) 合併後消滅する会社の株主又は社員
六 合併契約に基づく設立時発行株式の発行 合併後消滅する会社の株主又は社員
七 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得 株式交換をする株式会社の株主
八 株式移転計画に基づく設立時発行株式の発行 株式移転をする株式会社の株主
九 株式交付株式交付親会社(第七百七十四条の三第一項第一号に規定する株式交付親会社をいう。)に株式交付に際して株式交付子会社(同号に規定する株式交付子会社をいう。)の株式又は新株予約権等(同項第七号に規定する新株予約権等をいう。)を譲り渡した者
2 株式会社は,前項の規定による競売に代えて,市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって,市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により,これを売却することができる。この場合において,当該許可の申立ては,取締役が二人以上あるときは,その全員の同意によってしなければならない。
3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については,同項中「競売により」とあるのは,「売却により」とする。
4 株式会社は,第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)
二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額
5 取締役会設置会社においては,前項各号に掲げる事項の決定は,取締役会の決議によらなければならない。
6 第一項から第四項までの規定は,第一項各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の社債又は新株予約権を交付するときについて準用する。

第三章 新株予約権

(新株予約権の内容)
第二百三十六条
 株式会社が新株予約権を発行するときは,次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
一 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二 当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
三 金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは,その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 当該新株予約権を行使することができる期間
五 当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
六 譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは,その旨
七 当該新株予約権について,当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは,次に掲げる事項
イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは,その旨
ハ イの事由が生じた日にイの新株予約権の一部を取得することとするときは,その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法
ニ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式を交付するときは,当該株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)又はその算定方法
ホ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは,当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ヘ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の他の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは,当該他の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ト イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは,当該新株予約権付社債についてのホに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのヘに規定する事項
チ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは,当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
八 当該株式会社が次のイからホまでに掲げる行為をする場合において,当該新株予約権の新株予約権者に当該イからホまでに定める株式会社の新株予約権を交付することとするときは,その旨及びその条件
イ 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 合併後存続する株式会社又は合併により設立する株式会社
ロ 吸収分割 吸収分割をする株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を承継する株式会社
ハ 新設分割 新設分割により設立する株式会社
ニ 株式交換 株式交換をする株式会社の発行済株式の全部を取得する株式会社
ホ 株式移転 株式移転により設立する株式会社
九 新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数がある場合において,これを切り捨てるものとするときは,その旨
十 当該新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)に係る新株予約権証券を発行することとするときは,その旨
十一 前号に規定する場合において,新株予約権者が第二百九十条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは,その旨
2 新株予約権付社債に付された新株予約権の数は,当該新株予約権付社債についての社債の金額ごとに,均等に定めなければならない。
3 金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は,定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに従い新株予約権を発行するときは,第一項第二号に掲げる事項を当該新株予約権の内容とすることを要しない。この場合において,当該株式会社は,次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
一 取締役の報酬等として又は取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり,当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込み又は第一項第三号の財産の給付を要しない旨
二 定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに係る取締役(取締役であった者を含む。)以外の者は,当該新株予約権を行使することができない旨
4 指名委員会等設置会社における前項の規定の適用については,同項中「定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定め」とあるのは「報酬委員会による第四百九条第三項第四号又は第五号ロに定める事項についての決定」と,同項第一号中「取締役」とあるのは「執行役若しくは取締役」と,同項第二号中「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」とする。

第四章 機関

(株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)
第三百一条
 取締役は,第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には,第二百九十九条第一項の通知に際して,法務省令で定めるところにより,株主に対し,議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この節において「株主総会参考書類」という。)及び株主が議決権を行使するための書面(以下この節において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
2 取締役は,第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは,前項の規定による株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて,これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし,株主の請求があったときは,これらの書類を当該株主に交付しなければならない。

第三百五条 株主は,取締役に対し,株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては,その期間)前までに,株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第二百九十九条第二項又は第三項の通知をする場合にあっては,その通知に記載し,又は記録すること)を請求することができる。ただし,取締役会設置会社においては,総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては,その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては,その期間)前から引き続き有する株主に限り,当該請求をすることができる。
2 公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については,同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては,その期間)前から引き続き有する」とあるのは,「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は,同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。
4 取締役会設置会社の株主が第一項の規定による請求をする場合において,当該株主が提出しようとする議案の数が十を超えるときは,前三項の規定は,十を超える数に相当することとなる数の議案については,適用しない。この場合において,当該株主が提出しようとする次の各号に掲げる議案の数については,当該各号に定めるところによる。
一 取締役,会計参与,監査役又は会計監査人(次号において「役員等」という。)の選任に関する議案 当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
二 役員等の解任に関する議案 当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
三 会計監査人を再任しないことに関する議案 当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
四 定款の変更に関する二以上の議案 当該二以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合には,これらを一の議案とみなす。
5 前項前段の十を超える数に相当することとなる数の議案は,取締役がこれを定める。ただし,第一項の規定による請求をした株主が当該請求と併せて当該株主が提出しようとする二以上の議案の全部又は一部につき議案相互間の優先順位を定めている場合には,取締役は,当該優先順位に従い,これを定めるものとする。

6 第一項から第三項までの規定は,第一項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には,適用しない。

(議決権の代理行使)
第三百十条
 株主は,代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては,当該株主又は代理人は,代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。
2 前項の代理権の授与は,株主総会ごとにしなければならない。
3 第一項の株主又は代理人は,代理権を証明する書面の提出に代えて,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において,当該株主又は代理人は,当該書面を提出したものとみなす。
4 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には,株式会社は,正当な理由がなければ,前項の承諾をすることを拒んではならない。
5 株式会社は,株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。
6 株式会社は,株主総会の日から三箇月間,代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
7 株主(前項の株主総会において決議をした事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条第四項及び第三百十二条第五項において同じ。)は,株式会社の営業時間内は,いつでも,次に掲げる請求をすることができる。この場合においては,当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
8 株式会社は,前項の請求があったときは,次のいずれかに該当する場合を除き,これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ,又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が代理権を証明する書面の閲覧若しくは謄写又は前項第二号の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四 請求者が,過去二年以内において,代理権を証明する書面の閲覧若しくは謄写又は前項第二号の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

(書面による議決権の行使)
第三百十一条
 書面による議決権の行使は,議決権行使書面に必要な事項を記載し,法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。
2 前項の規定により書面によって行使した議決権の数は,出席した株主の議決権の数に算入する。
3 株式会社は,株主総会の日から三箇月間,第一項の規定により提出された議決権行使書面をその本店に備え置かなければならない。
4 株主は,株式会社の営業時間内は,いつでも,第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。この場合においては,当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
5 株式会社は,前項の請求があったときは,次のいずれかに該当する場合を除き,これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ,又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四 請求者が,過去二年以内において,第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

(電磁的方法による議決権の行使)
第三百十二条
 電磁的方法による議決権の行使は,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を,電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。
2 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には,株式会社は,正当な理由がなければ,前項の承諾をすることを拒んではならない。
3 第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は,出席した株主の議決権の数に算入する。
4 株式会社は,株主総会の日から三箇月間,第一項の規定により提供された事項を記録した電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
5 株主は,株式会社の営業時間内は,いつでも,前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。この場合においては,当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
6 株式会社は,前項の請求があったときは,次のいずれかに該当する場合を除き,これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ,又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四 請求者が,過去二年以内において,前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)
第三百二十二条
 種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において,ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは,当該行為は,当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては,当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ,その効力を生じない。ただし,当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は,この限りでない。
一 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
一の二 第百七十九条の三第一項の承認
二 株式の併合又は株式の分割
三 第百八十五条に規定する株式無償割当て
四 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
五 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
六 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て
七 合併
八 吸収分割
九 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
十 新設分割
十一 株式交換
十二 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
十三 株式移転
十四 株式交付
2 種類株式発行会社は,ある種類の株式の内容として,前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。
3 第一項の規定は,前項の規定による定款の定めがある種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会については,適用しない。ただし,第一項第一号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合は,この限りでない。
4 ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式について第二項の規定による定款の定めを設けようとするときは,当該種類の種類株主全員の同意を得なければならない。

(種類株主総会の決議)
第三百二十四条
 種類株主総会の決議は,定款に別段の定めがある場合を除き,その種類の株式の総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず,次に掲げる種類株主総会の決議は,当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては,その割合以上)を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては,当該決議の要件に加えて,一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百十一条第二項の種類株主総会(ある種類の株式の内容として第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合に限る。)
二 第百九十九条第四項及び第二百条第四項の種類株主総会
三 第二百三十八条第四項及び第二百三十九条第四項の種類株主総会
四 第三百二十二条第一項の種類株主総会
五 第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会
六 第七百九十五条第四項の種類株主総会
七 第八百十六条の三第三項の種類株主総会
3 前二項の規定にかかわらず,次に掲げる種類株主総会の決議は,当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合以上)であって,当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 第百十一条第二項の種類株主総会(ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合に限る。)
二 第七百八十三条第三項及び第八百四条第三項の種類株主総会

(電子提供措置をとる旨の定款の定め)
第三百二十五条の二
 株式会社は,取締役が株主総会(種類株主総会を含む。)の招集の手続を行うときは,次に掲げる資料(以下この款において「株主総会参考書類等」という。)の内容である情報について,電子提供措置(電磁的方法により株主(種類株主総会を招集する場合にあっては,ある種類の株主に限る。)が情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって,法務省令で定めるものをいう。以下この款,第九百十一条第三項第十二号の二及び第九百七十六条第十九号において同じ。)をとる旨を定款で定めることができる。この場合において,その定款には,電子提供措置をとる旨を定めれば足りる。
一 株主総会参考書類
二 議決権行使書面
三 第四百三十七条の計算書類及び事業報告
四 第四百四十四条第六項の連結計算書類

(電子提供措置)
第三百二十五条の三
 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は,第二百九十九条第二項各号に掲げる場合には,株主総会の日の三週間前の日又は同条第一項の通知を発した日のいずれか早い日(以下この款において「電子提供措置開始日」という。)から株主総会の日後三箇月を経過する日までの間(以下この款において「電子提供措置期間」という。),次に掲げる事項に係る情報について継続して電子提供措置をとらなければならない。
一 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項
二 第三百一条第一項に規定する場合には,株主総会参考書類及び議決権行使書面に記載すべき事項
三 第三百二条第一項に規定する場合には,株主総会参考書類に記載すべき事項
四 第三百五条第一項の規定による請求があった場合には,同項の議案の要領
五 株式会社が取締役会設置会社である場合において,取締役が定時株主総会を招集するときは,第四百三十七条の計算書類及び事業報告に記載され,又は記録された事項
六 株式会社が会計監査人設置会社(取締役会設置会社に限る。)である場合において,取締役が定時株主総会を招集するときは,第四百四十四条第六項の連結計算書類に記載され,又は記録された事項
七 前各号に掲げる事項を修正したときは,その旨及び修正前の事項
2 前項の規定にかかわらず,取締役が第二百九十九条第一項の通知に際して株主に対し議決権行使書面を交付するときは,議決権行使書面に記載すべき事項に係る情報については,前項の規定により電子提供措置をとることを要しない。
3 第一項の規定にかかわらず,金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社が,電子提供措置開始日までに第一項各号に掲げる事項(定時株主総会に係るものに限り,議決権行使書面に記載すべき事項を除く。)を記載した有価証券報告書(添付書類及びこれらの訂正報告書を含む。)の提出の手続を同法第二十七条の三十の二に規定する開示用電子情報処理組織(以下この款において単に「開示用電子情報処理組織」という。)を使用して行う場合には,当該事項に係る情報については,同項の規定により電子提供措置をとることを要しない。

(株主総会の招集の通知等の特則)
第三百二十五条の四
 前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合における第二百九十九条第一項の規定の適用については,同項中「二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き,公開会社でない株式会社にあっては,一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において,これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては,その期間))」とあるのは,「二週間」とする。
2 第二百九十九条第四項の規定にかかわらず,前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合には,第二百九十九条第二項又は第三項の通知には,第二百九十八条第一項第五号に掲げる事項を記載し,又は記録することを要しない。この場合において,当該通知には,同項第一号から第四号までに掲げる事項のほか,次に掲げる事項を記載し,又は記録しなければならない。
一 電子提供措置をとっているときは,その旨
二 前条第三項の手続を開示用電子情報処理組織を使用して行ったときは,その旨
三 前二号に掲げるもののほか,法務省令で定める事項
3 第三百一条第一項,第三百二条第一項,第四百三十七条及び第四百四十四条第六項の規定にかかわらず,電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社においては,取締役は,第二百九十九条第一項の通知に際して,株主に対し,株主総会参考書類等を交付し,又は提供することを要しない。
4 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社における第三百五条第一項の規定の適用については,同項中「その通知に記載し,又は記録する」とあるのは,「当該議案の要領について第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をとる」とする。

(書面交付請求)
第三百二十五条の五
 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主(第二百九十九条第三項(第三百二十五条において準用する場合を含む。)の承諾をした株主を除く。)は,株式会社に対し,第三百二十五条の三第一項各号(第三百二十五条の七において準用する場合を含む。)に掲げる事項(以下この条において「電子提供措置事項」という。)を記載した書面の交付を請求することができる。
2 取締役は,第三百二十五条の三第一項の規定により電子提供措置をとる場合には,第二百九十九条第一項の通知に際して,前項の規定による請求(以下この条において「書面交付請求」という。)をした株主(当該株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための基準日(第百二十四条第一項に規定する基準日をいう。)を定めた場合にあっては,当該基準日までに書面交付請求をした者に限る。)に対し,当該株主総会に係る電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 株式会社は,電子提供措置事項のうち法務省令で定めるものの全部又は一部については,前項の規定により交付する書面に記載することを要しない旨を定款で定めることができる。
4 書面交付請求をした株主がある場合において,その書面交付請求の日(当該株主が次項ただし書の規定により異議を述べた場合にあっては,当該異議を述べた日)から一年を経過したときは,株式会社は,当該株主に対し,第二項の規定による書面の交付を終了する旨を通知し,かつ,これに異議のある場合には一定の期間(以下この条において「催告期間」という。)内に異議を述べるべき旨を催告することができる。ただし,催告期間は,一箇月を下ることができない。
5 前項の規定による通知及び催告を受けた株主がした書面交付請求は,催告期間を経過した時にその効力を失う。ただし,当該株主が催告期間内に異議を述べたときは,この限りでない。

(電子提供措置の中断)
第三百二十五条の六
 第三百二十五条の三第一項の規定にかかわらず,電子提供措置期間中に電子提供措置の中断(株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改変されたこと(同項第七号の規定により修正されたことを除く。)をいう。以下この条において同じ。)が生じた場合において,次の各号のいずれにも該当するときは,その電子提供措置の中断は,当該電子提供措置の効力に影響を及ぼさない。
一 電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること。
二 電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の十分の一を超えないこと。
三 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じたときは,当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の十分の一を超えないこと。
四 株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨,電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと。

(株主総会に関する規定の準用)
第三百二十五条の七
 第三百二十五条の三から前条まで(第三百二十五条の三第一項(第五号及び第六号に係る部分に限る。)及び第三項並びに第三百二十五条の五第一項及び第三項から第五項までを除く。)の規定は,種類株主総会について準用する。この場合において,第三百二十五条の三第一項中「第二百九十九条第二項各号」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十九条第二項各号」と,「同条第一項」とあるのは「同条第一項(第三百二十五条において準用する場合に限る。次項,次条及び第三百二十五条の五において同じ。)」と,「第二百九十八条第一項各号」とあるのは「第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合に限る。)」と,「第三百一条第一項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第三百一条第一項」と,「第三百二条第一項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第三百二条第一項」と,「第三百五条第一項」とあるのは「第三百五条第一項(第三百二十五条において準用する場合に限る。次条第四項において同じ。)」と,同条第二項中「株主」とあるのは「株主(ある種類の株式の株主に限る。次条から第三百二十五条の六までにおいて同じ。)」と,第三百二十五条の四第二項中「第二百九十九条第四項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十九条第四項」と,「第二百九十九条第二項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十九条第二項」と,「第二百九十八条第一項第五号」とあるのは「第三百二十五条において準用する第二百九十八条第一項第五号」と,「同項第一号から第四号まで」とあるのは「第三百二十五条において準用する同項第一号から第四号まで」と,同条第三項中「第三百一条第一項,第三百二条第一項,第四百三十七条及び第四百四十四条第六項」とあるのは「第三百二十五条において準用する第三百一条第一項及び第三百二条第一項」と読み替えるものとする。

(社外取締役の設置義務)
第三百二十七条の二
 監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,社外取締役を置かなければならない。

(取締役の資格等)
第三百三十一条
 次に掲げる者は,取締役となることができない。
一 法人
二 削除
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し,又は金融商品取引法第百九十七条,第百九十七条の二第一号から第十号の三まで若しくは第十三号から第十五号まで,第百九十八条第八号,第百九十九条,第二百条第一号から第十二号の二まで,第二十号若しくは第二十一号,第二百三条第三項若しくは第二百五条第一号から第六号まで,第十九号若しくは第二十号の罪,民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条,第二百五十六条,第二百五十八条から第二百六十条まで若しくは第二百六十二条の罪,外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第六十五条,第六十六条,第六十八条若しくは第六十九条の罪,会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条,第二百六十七条,第二百六十九条から第二百七十一条まで若しくは第二百七十三条の罪若しくは破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条,第二百六十六条,第二百六十八条から第二百七十二条まで若しくは第二百七十四条の罪を犯し,刑に処せられ,その執行を終わり,又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
2 株式会社は,取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし,公開会社でない株式会社においては,この限りでない。
3 監査等委員である取締役は,監査等委員会設置会社若しくはその子会社の業務執行取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは,その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。
4 指名委員会等設置会社の取締役は,当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。
5 取締役会設置会社においては,取締役は,三人以上でなければならない。
6 監査等委員会設置会社においては,監査等委員である取締役は,三人以上で,その過半数は,社外取締役でなければならない。

第三百三十一条の二 成年被後見人が取締役に就任するには,その成年後見人が,成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては,成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で,成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない。
2 被保佐人が取締役に就任するには,その保佐人の同意を得なければならない。
3 第一項の規定は,保佐人が民法第八百七十六条の四第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用する。この場合において,第一項中「成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては,成年被後見人及び後見監督人の同意)」とあるのは,「被保佐人の同意」と読み替えるものとする。
4 成年被後見人又は被保佐人がした取締役の資格に基づく行為は,行為能力の制限によっては取り消すことができない。

(監査役の資格等)
第三百三十五条
 第三百三十一条第一項及び第二項並びに第三百三十一条の二の規定は,監査役について準用する。
2 監査役は,株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは,その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。
3 監査役会設置会社においては,監査役は,三人以上で,そのうち半数以上は,社外監査役でなければならない。

(業務の執行の社外取締役への委託)
第三百四十八条の二
 株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が社外取締役を置いている場合において,当該株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき,その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは,当該株式会社は,その都度,取締役の決定(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)によって,当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。
2 指名委員会等設置会社と執行役との利益が相反する状況にあるとき,その他執行役が指名委員会等設置会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは,当該指名委員会等設置会社は,その都度,取締役会の決議によって,当該指名委員会等設置会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。
3 前二項の規定により委託された業務の執行は,第二条第十五号イに規定する株式会社の業務の執行に該当しないものとする。ただし,社外取締役が業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては,執行役)の指揮命令により当該委託された業務を執行したときは,この限りでない。

(取締役の報酬等)
第三百六十一条
 取締役の報酬,賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は,定款に当該事項を定めていないときは,株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては,その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては,その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については,当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては,募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については,当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については,当該イ又はロに定める事項
イ 当該株式会社の募集株式
 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては,募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ 当該株式会社の募集新株予約権
 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については,その具体的な内容
2 監査等委員会設置会社においては,前項各号に掲げる事項は,監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
3 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは,当該報酬等は,第一項の報酬等の範囲内において,監査等委員である取締役の協議によって定める。
4 第一項各号に掲げる事項を定め,又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は,当該株主総会において,当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。
5 監査等委員である取締役は,株主総会において,監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
6 監査等委員会が選定する監査等委員は,株主総会において,監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
7 次に掲げる株式会社の取締役会は,取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項についての定めがある場合には,当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし,取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは,この限りでない。
一 監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって,金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの
二 監査等委員会設置会社

(監査等委員会設置会社の取締役会の権限)
第三百九十九条の十三
 監査等委員会設置会社の取締役会は,第三百六十二条の規定にかかわらず,次に掲げる職務を行う。
一 次に掲げる事項その他監査等委員会設置会社の業務執行の決定
イ 経営の基本方針
ロ 監査等委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項
ハ 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
2 監査等委員会設置会社の取締役会は,前項第一号イからハまでに掲げる事項を決定しなければならない。
3 監査等委員会設置会社の取締役会は,取締役(監査等委員である取締役を除く。)の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 監査等委員会設置会社の取締役会は,次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置,変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 前項の規定にかかわらず,監査等委員会設置会社の取締役の過半数が社外取締役である場合には,当該監査等委員会設置会社の取締役会は,その決議によって,重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる。ただし,次に掲げる事項については,この限りでない。
一 第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定
二 第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定
三 第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定
四 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定
五 株主総会に提出する議案(会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
六 第三百四十八条の二第一項の規定による委託
七 第三百六十一条第七項の規定による同項の事項の決定
 第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項の承認
 第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定
 第三百九十九条の七第一項第一号の規定による監査等委員会設置会社を代表する者の決定
十一 前項第六号に掲げる事項
十二 補償契約(第四百三十条の二第一項に規定する補償契約をいう。第四百十六条第四項第十四号において同じ。)の内容の決定
十三 役員等賠償責任保険契約(第四百三十条の三第一項に規定する役員等賠償責任保険契約をいう。第四百十六条第四項第十五号において同じ。)の内容の決定

十四 第四百三十六条第三項,第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認
十五 第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定
十六 第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十七 合併契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十八 吸収分割契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十九 新設分割計画(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十 株式交換契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十一 株式移転計画の内容の決定
二十二 株式交付計画(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
6 前二項の規定にかかわらず,監査等委員会設置会社は,取締役会の決議によって重要な業務執行(前項各号に掲げる事項を除く。)の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができる。

(執行役の選任等)
第四百二条
 指名委員会等設置会社には,一人又は二人以上の執行役を置かなければならない。
2 執行役は,取締役会の決議によって選任する。
3 指名委員会等設置会社と執行役との関係は,委任に関する規定に従う。
4 第三百三十一条第一項及び第三百三十一条の二の規定は,執行役について準用する。
5 株式会社は,執行役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし,公開会社でない指名委員会等設置会社については,この限りでない。
6 執行役は,取締役を兼ねることができる。
7 執行役の任期は,選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までとする。ただし,定款によって,その任期を短縮することを妨げない。
8 前項の規定にかかわらず,指名委員会等設置会社が指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には,執行役の任期は,当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

(報酬委員会による報酬の決定の方法等)
第四百九条
 報酬委員会は,執行役等の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならない。
2 報酬委員会は,第四百四条第三項の規定による決定をするには,前項の方針に従わなければならない。
3 報酬委員会は,次の各号に掲げるものを執行役等の個人別の報酬等とする場合には,その内容として,当該各号に定める事項について決定しなければならない。ただし,会計参与の個人別の報酬等は,第一号に掲げるものでなければならない。
一 額が確定しているもの 個人別の額
二 額が確定していないもの 個人別の具体的な算定方法
三 当該株式会社の募集株式当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては,募集株式の種類及び種類ごとの数)その他法務省令で定める事項
四 当該株式会社の募集新株予約権当該募集新株予約権の数その他法務省令で定める事項
五 次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭当該イ又はロ に定める事項
イ 当該株式会社の募集株式執行役等が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては,募集株式の種類及び種類ごとの数)その他法務省令で定める事項
ロ当該株式会社の募集新株予約権執行役等が引き受ける当該募集新株予約権の数その他法務省令で定める事項

 金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。) 個人別の具体的な内容

(指名委員会等設置会社の取締役会の権限)
第四百十六条
 指名委員会等設置会社の取締役会は,第三百六十二条の規定にかかわらず,次に掲げる職務を行う。
一 次に掲げる事項その他指名委員会等設置会社の業務執行の決定
イ 経営の基本方針
ロ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項
ハ 執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項
ニ 次条第二項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役
ホ 執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
二 執行役等の職務の執行の監督
2 指名委員会等設置会社の取締役会は,前項第一号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない。
3 指名委員会等設置会社の取締役会は,第一項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。
4 指名委員会等設置会社の取締役会は,その決議によって,指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし,次に掲げる事項については,この限りでない。
一 第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定
二 第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定
三 第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定
四 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定
五 株主総会に提出する議案(取締役,会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
六 第三百四十八条の二第二項の規定による委託
 第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認
 第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定
 第四百条第二項の規定による委員の選定及び第四百一条第一項の規定による委員の解職
 第四百二条第二項の規定による執行役の選任及び第四百三条第一項の規定による執行役の解任
十一 第四百八条第一項第一号の規定による指名委員会等設置会社を代表する者の決定
十二 第四百二十条第一項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第二項の規定による代表執行役の解職
十三 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
十四 補償契約の内容の決定
十五 役員等賠償責任保険契約の内容の決定

十六 第四百三十六条第三項,第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認
十七 第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定
十八 第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十九 合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十 吸収分割契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十一 新設分割計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十二 株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十三 株式移転計画の内容の決定
二十四 株式交付計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条
 取締役,会計参与,監査役,執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は,その任務を怠ったときは,株式会社に対し,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは,当該取引によって取締役,執行役又は第三者が得た利益の額は,前項の損害の額と推定する。
3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは,次に掲げる取締役又は執行役は,その任務を怠ったものと推定する。
一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては,当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
4 前項の規定は,第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において,同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは,適用しない。

(補償契約)
第四百三十条の二
 株式会社が,役員等に対して次に掲げる費用等の全部又は一部を当該株式会社が補償することを約する契約(以下この条において「補償契約」という。)の内容の決定をするには,株主総会(取締役会設置会社にあっては,取締役会)の決議によらなければならない。
一 当該役員等が,その職務の執行に関し,法令の規定に違反したことが疑われ,又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
二 当該役員等が,その職務の執行に関し,第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失
イ 当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失
ロ 当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは,当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失
2 株式会社は,補償契約を締結している場合であっても,当該補償契約に基づき,次に掲げる費用等を補償することができない。
一 前項第一号に掲げる費用のうち通常要する費用の額を超える部分
二 当該株式会社が前項第二号の損害を賠償するとすれば当該役員等が当該株式会社に対して第四百二十三条第一項の責任を負う場合には,同号に掲げる損失のうち当該責任に係る部分
三 役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより前項第二号の責任を負う場合には,同号に掲げる損失の全部
3 補償契約に基づき第一項第一号に掲げる費用を補償した株式会社が,当該役員等が自己若しくは第三者の不正な利益を図り,又は当該株式会社に損害を加える目的で同号の職務を執行したことを知ったときは,当該役員等に対し,補償した金額に相当する金銭を返還することを請求することができる。
4 取締役会設置会社においては,補償契約に基づく補償をした取締役及び当該補償を受けた取締役は,遅滞なく,当該補償についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
5 前項の規定は,執行役について準用する。この場合において,同項中「取締役会設置会社においては,補償契約」とあるのは,「補償契約」と読み替えるものとする。
6 第三百五十六条第一項及び第三百六十五条第二項(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。),第四百二十三条第三項並びに第四百二十八条第一項の規定は,株式会社と取締役又は執行役との間の補償契約については,適用しない。
7 民法第百八条の規定は,第一項の決議によってその内容が定められた前項の補償契約の締結については,適用しない。

(役員等のために締結される保険契約)
第四百三十条の三
 株式会社が,保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって,役員等を被保険者とするもの(当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。第三項ただし書において「役員等賠償責任保険契約」という。)の内容の決定をするには,株主総会(取締役会設置会社にあっては,取締役会)の決議によらなければならない。
2 第三百五十六条第一項及び第三百六十五条第二項(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)並びに第四百二十三条第三項の規定は,株式会社が保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって,取締役又は執行役を被保険者とするものの締結については,適用しない。
3 民法第百八条の規定は,前項の保険契約の締結については,適用しない。ただし,当該契約が役員等賠償責任保険契約である場合には,第一項の決議によってその内容が定められたときに限る。

第五章 計算等

(資本金の額及び準備金の額)
第四百四十五条
 株式会社の資本金の額は,この法律に別段の定めがある場合を除き,設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は,資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は,資本準備金として計上しなければならない。
4 剰余金の配当をする場合には,株式会社は,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。
5 合併,吸収分割,新設分割,株式交換,株式移転又は株式交付に際して資本金又は準備金として計上すべき額については,法務省令で定める。
6 定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号,第四号若しくは第五号ロに掲げる事項についての定め又は報酬委員会による第四百九条第三項第三号,第四号若しくは第五号ロに定める事項についての決定に基づく株式の発行により資本金又は準備金として計上すべき額については,法務省令で定める。

第六章 定款の変更~第八章 解散

 改正された条文はありません。

第九章 清算

(清算人の就任)
第四百七十八条
 次に掲げる者は,清算株式会社の清算人となる。
一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 株主総会の決議によって選任された者
2 前項の規定により清算人となる者がないときは,裁判所は,利害関係人の申立てにより,清算人を選任する。
3 前二項の規定にかかわらず,第四百七十一条第六号に掲げる事由によって解散した清算株式会社については,裁判所は,利害関係人若しくは法務大臣の申立てにより又は職権で,清算人を選任する。
4 第一項及び第二項の規定にかかわらず,第四百七十五条第二号又は第三号に掲げる場合に該当することとなった清算株式会社については,裁判所は,利害関係人の申立てにより,清算人を選任する。
5 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において監査等委員会設置会社であった清算株式会社における第一項第一号の規定の適用については,同号中「取締役」とあるのは,「監査等委員である取締役以外の取締役」とする。
6 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において指名委員会等設置会社であった清算株式会社における第一項第一号の規定の適用については,同号中「取締役」とあるのは,「監査委員以外の取締役」とする。
7 第三百三十五条第三項の規定にかかわらず,第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社であった清算株式会社である監査役会設置会社においては,監査役は,三人以上で,そのうち半数以上は,次に掲げる要件のいずれにも該当するものでなければならない。
一 その就任の前十年間当該監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社又はその子会社の取締役(社外取締役を除く。),会計参与(会計参与が法人であるときは,その職務を行うべき社員。次号において同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
二 その就任の前十年内のいずれかの時において当該監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社又はその子会社の社外取締役又は監査役であったことがある者にあっては,当該社外取締役又は監査役への就任の前十年間当該監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社又はその子会社の取締役(社外取締役を除く。),会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
三 第二条第十六号ハからホまでに掲げる要件
8 第三百三十条,第三百三十一条第一項及び第三百三十一条の二の規定は清算人について,第三百三十一条第五項の規定は清算人会設置会社(清算人会を置く清算株式会社又はこの法律の規定により清算人会を置かなければならない清算株式会社をいう。以下同じ。)について,それぞれ準用する。この場合において,同項中「取締役は」とあるのは,「清算人は」と読み替えるものとする。

第五百九条 次に掲げる規定は,清算株式会社については,適用しない。
一 第百五十五条
二 第五章第二節第二款(第四百三十五条第四項,第四百四十条第三項,第四百四十二条及び第四百四十三条を除く。)及び第三款並びに第三節から第五節まで
三 第五編第四章及び第四章の二並びに同編第五章中株式交換,株式移転及び株式交付の手続に係る部分
2 第二章第四節の二の規定は,対象会社が清算株式会社である場合には,適用しない。
3 清算株式会社は,無償で取得する場合その他法務省令で定める場合に限り,当該清算株式会社の株式を取得することができる。

第三編 持分会社(§575~§675)

 改正された条文はありません。

第四編 社債(§676~§742)

第一章 総則

(募集社債に関する事項の決定)
第六百七十六条
 会社は,その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは,その都度,募集社債(当該募集に応じて当該社債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる社債をいう。以下この編において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集社債の総額
二 各募集社債の金額
三 募集社債の利率
四 募集社債の償還の方法及び期限
五 利息支払の方法及び期限
六 社債券を発行するときは,その旨
七 社債権者が第六百九十八条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは,その旨
七の二 社債管理者を定めないこととするときは,その旨
八 社債管理者が社債権者集会の決議によらずに第七百六条第一項第二号に掲げる行為をすることができることとするときは,その旨
八の二 社債管理補助者を定めることとするときは,その旨
九 各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法
十 募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日
十一 一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において,募集社債の全部を発行しないこととするときは,その旨及びその一定の日
十二 前各号に掲げるもののほか,法務省令で定める事項

(社債原簿)
第六百八十一条
 会社は,社債を発行した日以後遅滞なく,社債原簿を作成し,これに次に掲げる事項(以下この章において「社債原簿記載事項」という。)を記載し,又は記録しなければならない。
一 第六百七十六条第三号から第八号の二までに掲げる事項その他の社債の内容を特定するものとして法務省令で定める事項(以下この編において「種類」という。)
二 種類ごとの社債の総額及び各社債の金額
三 各社債と引換えに払い込まれた金銭の額及び払込みの日
四 社債権者(無記名社債(無記名式の社債券が発行されている社債をいう。以下この編において同じ。)の社債権者を除く。)の氏名又は名称及び住所
五 前号の社債権者が各社債を取得した日
六 社債券を発行したときは,社債券の番号,発行の日,社債券が記名式か,又は無記名式かの別及び無記名式の社債券の数
七 前各号に掲げるもののほか,法務省令で定める事項

第二章 社債管理者

第七百六条 社債管理者は,社債権者集会の決議によらなければ,次に掲げる行為をしてはならない。ただし,第二号に掲げる行為については,第六百七十六条第八号に掲げる事項についての定めがあるときは,この限りでない。
一 当該社債の全部についてするその支払の猶予,その債務若しくはその債務の不履行によって生じた責任の免除又は和解(次号に掲げる行為を除く。)
二 当該社債の全部についてする訴訟行為又は破産手続,再生手続,更生手続若しくは特別清算に関する手続に属する行為(前条第一項の行為を除く。)
2 社債管理者は,前項ただし書の規定により社債権者集会の決議によらずに同項第二号に掲げる行為をしたときは,遅滞なく,その旨を公告し,かつ,知れている社債権者には,各別にこれを通知しなければならない。
3 前項の規定による公告は,社債発行会社における公告の方法によりしなければならない。ただし,その方法が電子公告であるときは,その公告は,官報に掲載する方法でしなければならない。
4 社債管理者は,その管理の委託を受けた社債につき第一項各号に掲げる行為をするために必要があるときは,裁判所の許可を得て,社債発行会社の業務及び財産の状況を調査することができる。

(社債管理補助者の設置)
第七百十四条の二
 会社は,第七百二条ただし書に規定する場合には,社債管理補助者を定め,社債権者のために,社債の管理の補助を行うことを委託することができる。ただし,当該社債が担保付社債である場合は,この限りでない。

(社債管理補助者の資格)
第七百十四条の三
 社債管理補助者は,第七百三条各号に掲げる者その他法務省令で定める者でなければならない。

(社債管理補助者の権限等)
第七百十四条の四
 社債管理補助者は,社債権者のために次に掲げる行為をする権限を有する。
一 破産手続参加,再生手続参加又は更生手続参加
二 強制執行又は担保権の実行の手続における配当要求
三 第四百九十九条第一項の期間内に債権の申出をすること。
2 社債管理補助者は,第七百十四条の二の規定による委託に係る契約に定める範囲内において,社債権者のために次に掲げる行為をする権限を有する。
一 社債に係る債権の弁済を受けること。
二 第七百五条第一項の行為(前項各号及び前号に掲げる行為を除く。)
三 第七百六条第一項各号に掲げる行為
四 社債発行会社が社債の総額について期限の利益を喪失することとなる行為
3 前項の場合において,社債管理補助者は,社債権者集会の決議によらなければ,次に掲げる行為をしてはならない。
一 前項第二号に掲げる行為であって,次に掲げるもの
イ 当該社債の全部についてするその支払の請求
ロ 当該社債の全部に係る債権に基づく強制執行,仮差押え又は仮処分
ハ 当該社債の全部についてする訴訟行為又は破産手続,再生手続,更生手続若しくは特別清算に関する手続に属する行為(イ及びロに掲げる行為を除く。)
二 前項第三号及び第四号に掲げる行為
4 社債管理補助者は,第七百十四条の二の規定による委託に係る契約に従い,社債の管理に関する事項を社債権者に報告し,又は社債権者がこれを知ることができるようにする措置をとらなければならない。
5 第七百五条第二項及び第三項の規定は,第二項第一号に掲げる行為をする権限を有する社債管理補助者について準用する。

(二以上の社債管理補助者がある場合の特則)
第七百十四条の五
 二以上の社債管理補助者があるときは,社債管理補助者は,各自,その権限に属する行為をしなければならない。
2 社債管理補助者が社債権者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において,他の社債管理補助者も当該損害を賠償する責任を負うときは,これらの者は,連帯債務者とする。

(社債管理者等との関係)
第七百十四条の六
 第七百二条の規定による委託に係る契約又は担保付社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)第二条第一項に規定する信託契約の効力が生じた場合には,第七百十四条の二の規定による委託に係る契約は,終了する。

(社債管理者に関する規定の準用)
第七百十四条の七
 第七百四条,第七百七条,第七百八条,第七百十条第一項,第七百十一条,第七百十三条及び第七百十四条の規定は,社債管理補助者について準用する。この場合において,第七百四条中「社債の管理」とあるのは「社債の管理の補助」と,同項中「社債権者に対し,連帯して」とあるのは「社債権者に対し」と,第七百十一条第一項中「において,他に社債管理者がないときは」とあるのは「において」と,同条第二項中「第七百二条」とあるのは「第七百十四条の二」と,第七百十四条第一項中「において,他に社債管理者がないときは」とあるのは「には」と,「社債の管理」とあるのは「社債の管理の補助」と,「第七百三条各号に掲げる」とあるのは「第七百十四条の三に規定する」と,「解散した」とあるのは「死亡し,又は解散した」と読み替えるものとする。

第三章 社債権者集会

(社債権者集会の招集)
第七百十七条
 社債権者集会は,次項又は必要がある場合には,いつでも,招集することができる。
2 社債権者集会は,次条第三項の規定により招集する場合を除き,社債発行会社又は社債管理者が招集する。
3 次に掲げる場合には,社債管理補助者は,社債権者集会を招集することができる。
一 次条第一項の規定による請求があった場合
二 第七百十四条の七において準用する第七百十一条第一項の社債権者集会の同意を得るため必要がある場合

(社債権者による招集の請求)
第七百十八条
 ある種類の社債の総額(償還済みの額を除く。)の十分の一以上に当たる社債を有する社債権者は,社債発行会社,社債管理者又は社債管理補助者に対し,社債権者集会の目的である事項及び招集の理由を示して,社債権者集会の招集を請求することができる。
2 社債発行会社が有する自己の当該種類の社債の金額の合計額は,前項に規定する社債の総額に算入しない。
3 次に掲げる場合には,第一項の規定による請求をした社債権者は,裁判所の許可を得て,社債権者集会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間以内の日を社債権者集会の日とする社債権者集会の招集の通知が発せられない場合
4 第一項の規定による請求又は前項の規定による招集をしようとする無記名社債の社債権者は,その社債券を社債発行会社,社債管理者又は社債管理補助者に提示しなければならない。

(社債権者集会の招集の通知)
第七百二十条
 社債権者集会を招集するには,招集者は,社債権者集会の日の二週間前までに,知れている社債権者及び社債発行会社並びに社債管理者又は社債管理補助者がある場合にあっては社債管理者又は社債管理補助者に対して,書面をもってその通知を発しなければならない。
2 招集者は,前項の書面による通知の発出に代えて,政令で定めるところにより,同項の通知を受けるべき者の承諾を得て,電磁的方法により通知を発することができる。この場合において,当該招集者は,同項の書面による通知を発したものとみなす。
3 前二項の通知には,前条各号に掲げる事項を記載し,又は記録しなければならない。
4 社債発行会社が無記名式の社債券を発行している場合において,社債権者集会を招集するには,招集者は,社債権者集会の日の三週間前までに,社債権者集会を招集する旨及び前条各号に掲げる事項を公告しなければならない。
5 前項の規定による公告は,社債発行会社における公告の方法によりしなければならない。ただし,招集者が社債発行会社以外の者である場合において,その方法が電子公告であるときは,その公告は,官報に掲載する方法でしなければならない。

(社債権者集会の決議)
第七百二十四条
 社債権者集会において決議をする事項を可決するには,出席した議決権者(議決権を行使することができる社債権者をいう。以下この章において同じ。)の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意がなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,社債権者集会において次に掲げる事項を可決するには,議決権者の議決権の総額の五分の一以上で,かつ,出席した議決権者の議決権の総額の三分の二以上の議決権を有する者の同意がなければならない。
一 第七百六条第一項各号に掲げる行為に関する事項
二 第七百六条第一項,第七百十四条の四第三項(同条第二項第三号に掲げる行為に係る部分に限る。),第七百三十六条第一項,第七百三十七条第一項ただし書及び第七百三十八条の規定により社債権者集会の決議を必要とする事項
3 社債権者集会は,第七百十九条第二号に掲げる事項以外の事項については,決議をすることができない。

(社債発行会社の代表者の出席等)
第七百二十九条
 社債発行会社,社債管理者又は社債管理補助者は,その代表者若しくは代理人を社債権者集会に出席させ,又は書面により意見を述べることができる。ただし,社債管理者又は社債管理補助者にあっては,その社債権者集会が第七百七条(第七百十四条の七において準用する場合を含む。)の特別代理人の選任について招集されたものであるときは,この限りでない。
2 社債権者集会又は招集者は,必要があると認めるときは,社債発行会社に対し,その代表者又は代理人の出席を求めることができる。この場合において,社債権者集会にあっては,これをする旨の決議を経なければならない。

(議事録)
第七百三十一条
 社債権者集会の議事については,招集者は,法務省令で定めるところにより,議事録を作成しなければならない。
2 社債発行会社は,社債権者集会の日から十年間,前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
3 社債管理者,社債管理補助者及び社債権者は,社債発行会社の営業時間内は,いつでも,次に掲げる請求をすることができる。
一 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは,当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは,当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

(社債権者集会の決議の省略)
第七百三十五条の二
 社債発行会社,社債管理者,社債管理補助者又は社債権者が社債権者集会の目的である事項について(社債管理補助者にあっては,第七百十四条の七において準用する第七百十一条第一項の社債権者集会の同意をすることについて)提案をした場合において,当該提案につき議決権者の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の社債権者集会の決議があったものとみなす。
2 社債発行会社は,前項の規定により社債権者集会の決議があったものとみなされた日から十年間,同項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
3 社債管理者,社債管理補助者及び社債権者は,社債発行会社の営業時間内は,いつでも,次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
4 第一項の規定により社債権者集会の決議があったものとみなされる場合には,第七百三十二条から前条まで(第七百三十四条第二項を除く。)の規定は,適用しない。

(社債権者集会の決議の執行)
第七百三十七条
 社債権者集会の決議は,次の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定める者が執行する。ただし,社債権者集会の決議によって別に社債権者集会の決議を執行する者を定めたときは,この限りでない。
一 社債管理者がある場合社債管理者
二 社債管理補助者がある場合において,社債管理補助者の権限に属する行為に関する事項を可決する旨の社債権者集会の決議があったとき社債管理補助者
三 前二号に掲げる場合以外の場合代表社債権者

2 第七百五条第一項から第三項まで,第七百八条及び第七百九条の規定は,代表社債権者又は前項ただし書の規定により定められた社債権者集会の決議を執行する者(以下この章において「決議執行者」という。)が社債権者集会の決議を執行する場合について準用する。

(債権者の異議手続の特則)
第七百四十条
 第四百四十九条,第六百二十七条,第六百三十五条,第六百七十条,第七百七十九条(第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。),第七百八十九条(第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。),第七百九十九条(第八百二条第二項において準用する場合を含む。),第八百十条(第八百十三条第二項において準用する場合を含む。)又は第八百十六条の八の規定により社債権者が異議を述べるには,社債権者集会の決議によらなければならない。この場合においては,裁判所は,利害関係人の申立てにより,社債権者のために異議を述べることができる期間を伸長することができる。
2 前項の規定にかかわらず,社債管理者は,社債権者のために,異議を述べることができる。ただし,第七百二条の規定による委託に係る契約に別段の定めがある場合は,この限りでない。
3 社債発行会社における第四百四十九条第二項,第六百二十七条第二項,第六百三十五条第二項,第六百七十条第二項,第七百七十九条第二項(第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。),第七百八十九条第二項(第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。),第七百九十九条第二項(第八百二条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。),第八百十条第二項(第八百十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)及び第八百十六条の八第二項の規定の適用については,第四百四十九条第二項,第六百二十七条第二項,第六百三十五条第二項,第六百七十条第二項,第七百七十九条第二項,第七百九十九条第二項及び第八百十六条の八第二項中「知れている債権者」とあるのは「知れている債権者(社債管理者又は社債管理補助者がある場合にあっては,当該社債管理者又は社債管理補助者を含む。)」と,第七百八十九条第二項及び第八百十条第二項中「知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)」とあるのは「知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限り,社債管理者又は社債管理補助者がある場合にあっては当該社債管理者又は社債管理補助者を含む。)」とする。

(社債管理者等の報酬等)
第七百四十一条
 社債管理者,社債管理補助者,代表社債権者又は決議執行者に対して与えるべき報酬,その事務処理のために要する費用及びその支出の日以後における利息並びにその事務処理のために自己の過失なくして受けた損害の賠償額は,社債発行会社との契約に定めがある場合を除き,裁判所の許可を得て,社債発行会社の負担とすることができる。
2 前項の許可の申立ては,社債管理者,社債管理補助者,代表社債権者又は決議執行者がする。
3 社債管理者,社債管理補助者,代表社債権者又は決議執行者は,第一項の報酬,費用及び利息並びに損害の賠償額に関し,第七百五条第一項(第七百三十七条第二項において準用する場合を含む。)又は第七百十四条の四第二項第一号の弁済を受けた額について,社債権者に先立って弁済を受ける権利を有する。

第五編 組織変更,合併,会社分割,株式交換,株式移転及び株式交付(§743~§816の10)

第一章 組織変更~第四章 株式交換及び株式移転

 改正された条文はありません。

第四章の二 株式交付

(株式交付計画の作成)
第七百七十四条の二
 株式会社は,株式交付をすることができる。この場合においては,株式交付計画を作成しなければならない。

(株式交付計画)
第七百七十四条の三
 株式会社が株式交付をする場合には,株式交付計画において,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式交付子会社(株式交付親会社(株式交付をする株式会社をいう。以下同じ。)が株式交付に際して譲り受ける株式を発行する株式会社をいう。以下同じ。)の商号及び住所
二 株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)の下限
三 株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として交付する株式交付親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項
四 株式交付子会社の株式の譲渡人に対する前号の株式交付親会社の株式の割当てに関する事項
五 株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として金銭等(株式交付親会社の株式を除く。以下この号及び次号において同じ。)を交付するときは,当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が株式交付親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは,当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ロ 当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは,当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ハ 当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権付社債であるときは,当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項
ニ 当該金銭等が株式交付親会社の社債及び新株予約権以外の財産であるときは,当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
六 前号に規定する場合には,株式交付子会社の株式の譲渡人に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
七 株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式と併せて株式交付子会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は新株予約権付社債(以下「新株予約権等」と総称する。)を譲り受けるときは,当該新株予約権等の内容及び数又はその算定方法
八 前号に規定する場合において,株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人に対して当該新株予約権等の対価として金銭等を交付するときは,当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が株式交付親会社の株式であるときは,当該株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ 当該金銭等が株式交付親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは,当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは,当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権付社債であるときは,当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該金銭等が株式交付親会社の株式等以外の財産であるときは,当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
九 前号に規定する場合には,株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
十 株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡しの申込みの期日
十一 株式交付がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)
2 前項に規定する場合には,同項第二号に掲げる事項についての定めは,株式交付子会社が効力発生日において株式交付親会社の子会社となる数を内容とするものでなければならない。
3 第一項に規定する場合において,株式交付子会社が種類株式発行会社であるときは,株式交付親会社は,株式交付子会社の発行する種類の株式の内容に応じ,同項第四号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の譲渡人に対して株式交付親会社の株式の割当てをしないこととするときは,その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか,株式交付親会社の株式の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは,その旨及び当該異なる取扱いの内容
4 第一項に規定する場合には,同項第四号に掲げる事項についての定めは,株式交付子会社の株式の譲渡人(前項第一号の種類の株式の譲渡人を除く。)が株式交付親会社に譲り渡す株式交付子会社の株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては,各種類の株式の数)に応じて株式交付親会社の株式を交付することを内容とするものでなければならない。
5 前二項の規定は,第一項第六号に掲げる事項について準用する。この場合において,前二項中「株式交付親会社の株式」とあるのは,「金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)」と読み替えるものとする。

(株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み)
第七百七十四条の四
 株式交付親会社は,株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者に対し,次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 株式交付親会社の商号
二 株式交付計画の内容
三 前二号に掲げるもののほか,法務省令で定める事項
2 株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをする者は,前条第一項第十号の期日までに,次に掲げる事項を記載した書面を株式交付親会社に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 譲り渡そうとする株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)
3 前項の申込みをする者は,同項の書面の交付に代えて,政令で定めるところにより,株式交付親会社の承諾を得て,同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において,当該申込みをした者は,同項の書面を交付したものとみなす。
4 第一項の規定は,株式交付親会社が同項各号に掲げる事項を記載した金融商品取引法第二条第十項に規定する目論見書を第一項の申込みをしようとする者に対して交付している場合その他株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には,適用しない。
5 株式交付親会社は,第一項各号に掲げる事項について変更があったとき(第八百十六条の九第一項の規定により効力発生日を変更したとき及び同条第五項の規定により前条第一項第十号の期日を変更したときを含む。)は,直ちに,その旨及び当該変更があった事項を第二項の申込みをした者(以下この章において「申込者」という。)に通知しなければならない。
6 株式交付親会社が申込者に対してする通知又は催告は,第二項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式交付親会社に通知した場合にあっては,その場所又は連絡先)に宛てて発すれば足りる。
7 前項の通知又は催告は,その通知又は催告が通常到達すべきであった時に,到達したものとみなす。

(株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式の割当て)
第七百七十四条の五
 株式交付親会社は,申込者の中から当該株式交付親会社が株式交付子会社の株式を譲り受ける者を定め,かつ,その者に割り当てる当該株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては,株式の種類ごとの数。以下この条において同じ。)を定めなければならない。この場合において,株式交付親会社は,申込者に割り当てる当該株式の数の合計が第七百七十四条の三第一項第二号の下限の数を下回らない範囲内で,当該株式の数を,前条第二項第二号の数よりも減少することができる。
2 株式交付親会社は,効力発生日の前日までに,申込者に対し,当該申込者から当該
式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式の数を通知しなければならない。

(株式交付子会社の株式の譲渡しの申込み及び株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式の割当てに関する特則)
第七百七十四条の六
 前二条の規定は,株式交付子会社の株式を譲り渡そうとする者が,株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の総数の譲渡しを行う契約を締結する場合には,適用しない。

(株式交付子会社の株式の譲渡し)
第七百七十四条の七
 次の各号に掲げる者は,当該各号に定める株式交付子会社の株式の数について株式交付における株式交付子会社の株式の譲渡人となる。
一 申込者第七百七十四条の五第二項の規定により通知を受けた株式交付子会社の株式の数
二 前条の契約により株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の総数を譲り渡すことを約した者その者が譲り渡すことを約した株式交付子会社の株式の数
2 前項各号の規定により株式交付子会社の株式の譲渡人となった者は,効力発生日に,それぞれ当該各号に定める数の株式交付子会社の株式を株式交付親会社に給付しなければならない。

(株式交付子会社の株式の譲渡しの無効又は取消しの制限)
第七百七十四条の八
 民法第九十三条第一項ただし書及び第九十四条第一項の規定は,第七百七十四条の四第二項の申込み,第七百七十四条の五第一項の規定による割当て及び第七百七十四条の六の契約に係る意思表示については,適用しない。
2 株式交付における株式交付子会社の株式の譲渡人は,第七百七十四条の十一第二項の規定により株式交付親会社の株式の株主となった日から一年を経過した後又はその株式について権利を行使した後は,錯誤,詐欺又は強迫を理由として株式交付子会社の株式の譲渡しの取消しをすることができない。

(株式交付子会社の株式の譲渡しに関する規定の準用)
第七百七十四条の九
 第七百七十四条の四から前条までの規定は,第七百七十四条の三第一項第七号に規定する場合における株式交付子会社の新株予約権等の譲渡しについて準用する。この場合において,第七百七十四条の四第二項第二号中「数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)」とあるのは「内容及び数」と,第七百七十四条の五第一項中「数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては,株式の種類ごとの数。以下この条において同じ。)」とあるのは「数」と,「申込者に割り当てる当該株式の数の合計が第七百七十四条の三第一項第二号の下限の数を下回らない範囲内で,当該株式」とあるのは「当該新株予約権等」と,前条第二項中「第七百七十四条の十一第二項」とあるのは「第七百七十四条の十一第四項第一号」と読み替えるものとする。

(申込みがあった株式交付子会社の株式の数が下限の数に満たない場合)
第七百七十四条の十
 第七百七十四条の五及び第七百七十四条の七(第一項第二号に係る部分を除く。)(これらの規定を前条において準用する場合を含む。)の規定は,第七百七十四条の三第一項第十号の期日において,申込者が譲渡しの申込みをした株式交付子会社の株式の総数が同項第二号の下限の数に満たない場合には,適用しない。この場合においては,株式交付親会社は,申込者に対し,遅滞なく,株式交付をしない旨を通知しなければならない。

(株式交付の効力の発生等)
第七百七十四条の十一
 株式交付親会社は,効力発生日に,第七百七十四条の七第二項(第七百七十四条の九において準用する場合を含む。)の規定による給付を受けた株式交付子会社の株式及び新株予約権等を譲り受ける。
2 第七百七十四条の七第二項の規定による給付をした株式交付子会社の株式の譲渡人は,効力発生日に,第七百七十四条の三第一項第四号に掲げる事項についての定めに従い,同項第三号の株式交付親会社の株式の株主となる。
3 次の各号に掲げる場合には,第七百七十四条の七第二項の規定による給付をした株式交付子会社の株式の譲渡人は,効力発生日に,第七百七十四条の三第一項第六号に掲げる事項についての定めに従い,当該各号に定める者となる。
一 第七百七十四条の三第一項第五号イに掲げる事項についての定めがある場合同号イの社債の社債権者
二 第七百七十四条の三第一項第五号ロに掲げる事項についての定めがある場合同号ロの新株予約権の新株予約権者
三 第七百七十四条の三第一項第五号ハに掲げる事項についての定めがある場合同号ハの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
4 次の各号に掲げる場合には,第七百七十四条の九において準用する第七百七十四条の七第二項の規定による給付をした株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人は,効力発生日に,第七百七十四条の三第一項第九号に掲げる事項についての定めに従い,当該各号に定める者となる。
一 第七百七十四条の三第一項第八号イに掲げる事項についての定めがある場合同号イの株式の株主
二 第七百七十四条の三第一項第八号ロに掲げる事項についての定めがある場合同号ロの社債の社債権者
三 第七百七十四条の三第一項第八号ハに掲げる事項についての定めがある場合同号ハの新株予約権の新株予約権者
四 第七百七十四条の三第一項第八号ニに掲げる事項についての定めがある場合同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
5 前各項の規定は,次に掲げる場合には,適用しない。
一 効力発生日において第八百十六条の八の規定による手続が終了していない場合
二 株式交付を中止した場合
三 効力発生日において株式交付親会社が第七百七十四条の七第二項の規定による給付を受けた株式交付子会社の株式の総数が第七百七十四条の三第一項第二号の下限の数に満たない場合
四 効力発生日において第二項の規定により第七百七十四条の三第一項第三号の株式交付親会社の株式の株主となる者がない場合
6 前項各号に掲げる場合には,株式交付親会社は,第七百七十四条の七第一項各号(第七百七十四条の九において準用する場合を含む。)に掲げる者に対し,遅滞なく,株式交付をしない旨を通知しなければならない。この場合において,第七百七十四条の七第二項(第七百七十四条の九において準用する場合を含む。)の規定による給付を受けた株式交付子会社の株式又は新株予約権等があるときは,株式交付親会社は,遅滞なく,これらをその譲渡人に返還しなければならない。

(株式交付計画に関する書面等の備置き及び閲覧等)
第八百十六条の二
 株式交付親会社は,株式交付計画備置開始日から株式交付がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)後六箇月を経過する日までの間,株式交付計画の内容その他法務省令で定める事項を記載し,又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
2 前項に規定する「株式交付計画備置開始日」とは,次に掲げる日のいずれか早い日をいう。
一 株式交付計画について株主総会(種類株主総会を含む。)の決議によってその承認を受けなければならないときは,当該株主総会の日の二週間前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては,同項の提案があった日)
二 第八百十六条の六第三項の規定による通知の日又は同条第四項の公告の日のいずれか早い日
三 第八百十六条の八の規定による手続をしなければならないときは,同条第二項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日
3 株式交付親会社の株主(株式交付に際して株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)が株式交付親会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合にあっては,株主及び債権者)は,株式交付親会社に対して,その営業時間内は,いつでも,次に掲げる請求をすることができる。ただし,第二号又は第四号に掲げる請求をするには,当該株式交付親会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 第一項の書面の閲覧の請求
二 第一項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 第一項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 第一項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式交付親会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

(株式交付計画の承認等)
第八百十六条の三
 株式交付親会社は,効力発生日の前日までに,株主総会の決議によって,株式交付計画の承認を受けなければならない。
2 株式交付親会社が株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式等を除く。)の帳簿価額が株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式及び新株予約権等の額として法務省令で定める額を超える場合には,取締役は,前項の株主総会において,その旨を説明しなければならない。
3 株式交付親会社が種類株式発行会社である場合において,次の各号に掲げるときは,株式交付は,当該各号に定める種類の株式(譲渡制限株式であって,第百九十九条第四項の定款の定めがないものに限る。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては,当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ,その効力を生じない。ただし,当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は,この限りでない。
一 株式交付子会社の株式の譲渡人に対して交付する金銭等が株式交付親会社の株式であるとき第七百七十四条の三第一項第三号の種類の株式
二 株式交付子会社の新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等が株式交付親会社の株式であるとき第七百七十四条の三第一項第八号イの種類の株式

(株式交付計画の承認を要しない場合等)
第八百十六条の四
 前条第一項及び第二項の規定は,第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を株式交付親会社の定款で定めた場合にあっては,その割合)を超えない場合には,適用しない。ただし,同項に規定する場合又は株式交付親会社が公開会社でない場合は,この限りでない。
一 次に掲げる額の合計額
イ 株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
ロ 株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の社債,新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
ハ 株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
二 株式交付親会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
2 前項本文に規定する場合において,法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第八百十六条の六第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に株式交付に反対する旨を株式交付親会社に対し通知したときは,当該株式交付親会社は,効力発生日の前日までに,株主総会の決議によって,株式交付計画の承認を受けなければならない。

(株式交付をやめることの請求)
第八百十六条の五
 株式交付が法令又は定款に違反する場合において,株式交付親会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときは,株式交付親会社の株主は,株式交付親会社に対し,株式交付をやめることを請求することができる。ただし,前条第一項本文に規定する場合(同項ただし書又は同条第二項に規定する場合を除く。)は,この限りでない。

(反対株主の株式買取請求)
第八百十六条の六 
株式交付をする場合には,反対株主は,株式交付親会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。ただし,第八百十六条の四第一項本文に規定する場合(同項ただし書又は同条第二項に規定する場合を除く。)は,この限りでない。
2 前項に規定する「反対株主」とは,次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。
一 株式交付をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合次に掲げる株主
イ 当該株主総会に先立って当該株式交付に反対する旨を当該株式交付親会社に対し通知し,かつ,当該株主総会において当該株式交付に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
二 前号に掲げる場合以外の場合全ての株主
3 株式交付親会社は,効力発生日の二十日前までに,その株主に対し,株式交付をする旨並びに株式交付子会社の商号及び住所を通知しなければならない。
4 次に掲げる場合には,前項の規定による通知は,公告をもってこれに代えることができる。
一 株式交付親会社が公開会社である場合
二 株式交付親会社が第八百十六条の三第一項の株主総会の決議によって株式交付計画の承認を受けた場合
5 第一項の規定による請求(以下この節において「株式買取請求」という。)は,効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に,その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
6 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは,当該株式の株主は,株式交付親会社に対し,当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし,当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については,この限りでない。
7 株式買取請求をした株主は,株式交付親会社の承諾を得た場合に限り,その株式買取請求を撤回することができる。
8 株式交付を中止したときは,株式買取請求は,その効力を失う。
9 第百三十三条の規定は,株式買取請求に係る株式については,適用しない。

(株式の価格の決定等)
第八百十六条の七
 株式買取請求があった場合において,株式の価格の決定について,株主と株式交付親会社との間に協議が調ったときは,株式交付親会社は,効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。
2 株式の価格の決定について,効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは,株主又は株式交付親会社は,その期間の満了の日後三十日以内に,裁判所に対し,価格の決定の申立てをすることができる。
3 前条第七項の規定にかかわらず,前項に規定する場合において,効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは,その期間の満了後は,株主は,いつでも,株式買取請求を撤回することができる。
4 株式交付親会社は,裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5 株式交付親会社は,株式の価格の決定があるまでは,株主に対し,当該株式交付親会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
6 株式買取請求に係る株式の買取りは,効力発生日に,その効力を生ずる。
7 株券発行会社は,株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは,株券と引換えに,その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

(債権者の異議)
第八百十六条の八
 株式交付に際して株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)が株式交付親会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合には,株式交付親会社の債権者は,株式交付親会社に対し,株式交付について異議を述べることができる。
2 前項の規定により株式交付親会社の債権者が異議を述べることができる場合には,株式交付親会社は,次に掲げる事項を官報に公告し,かつ,知れている債権者には,各別にこれを催告しなければならない。ただし,第四号の期間は,一箇月を下ることができない。
一 株式交付をする旨
二 株式交付子会社の商号及び住所
三 株式交付親会社及び株式交付子会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3 前項の規定にかかわらず,株式交付親会社が同項の規定による公告を,官報のほか,第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い,同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは,前項の規定による各別の催告は,することを要しない。
4 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べなかったときは,当該債権者は,当該株式交付について承認をしたものとみなす。
5 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは,株式交付親会社は,当該債権者に対し,弁済し,若しくは相当の担保を提供し,又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし,当該株式交付をしても当該債権者を害するおそれがないときは,この限りでない。

(株式交付の効力発生日の変更)
第八百十六条の九
 株式交付親会社は,効力発生日を変更することができる。
2 前項の規定による変更後の効力発生日は,株式交付計画において定めた当初の効力発生日から三箇月以内の日でなければならない。
3 第一項の場合には,株式交付親会社は,変更前の効力発生日(変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては,当該変更後の効力発生日)の前日までに,変更後の効力発生日を公告しなければならない。
4 第一項の規定により効力発生日を変更したときは,変更後の効力発生日を効力発生日とみなして,この節(第二項を除く。)及び前章(第七百七十四条の三第一項第十一号を除く。)の規定を適用する。
5 株式交付親会社は,第一項の規定による効力発生日の変更をする場合には,当該変更と同時に第七百七十四条の三第一項第十号の期日を変更することができる。
6 第三項及び第四項の規定は,前項の規定による第七百七十四条の三第一項第十号の期日の変更について準用する。この場合において,第四項中「この節(第二項を除く。)及び前章(第七百七十四条の三第一項第十一号を除く。)」とあるのは,「第七百七十四条の四,第七百七十四条の十及び前項」と読み替えるものとする。

(株式交付に関する書面等の備置き及び閲覧等)
第八百十六条の十
 株式交付親会社は,効力発生日後遅滞なく,株式交付に際して株式交付親会社が譲り受けた株式交付子会社の株式の数その他の株式交付に関する事項として法務省令で定める事項を記載し,又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。
2 株式交付親会社は,効力発生日から六箇月間,前項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
3 株式交付親会社の株主(株式交付に際して株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)が株式交付親会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合にあっては,株主及び債権者)は,株式交付親会社に対して,その営業時間内は,いつでも,次に掲げる請求をすることができる。ただし,第二号又は第四号に掲げる請求をするには,当該株式交付親会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 前項の書面の閲覧の請求
二 前項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式交付親会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

第六編 外国会社(§817~§823)

 改正された条文はありません。

第七編 雑則(§824~§959)

第一章 会社の解散命令等

 改正された条文はありません。

第二章 訴訟

(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
第八百二十八条
 次の各号に掲げる行為の無効は,当該各号に定める期間に,訴えをもってのみ主張することができる。
一 会社の設立 会社の成立の日から二年以内
二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては,株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
三 自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては,自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
四 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては,当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行 新株予約権の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては,新株予約権の発行の効力が生じた日から一年以内)
五 株式会社における資本金の額の減少 資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内
六 会社の組織変更 組織変更の効力が生じた日から六箇月以内
七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
八 会社の新設合併 新設合併の効力が生じた日から六箇月以内
九 会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内
十 会社の新設分割 新設分割の効力が生じた日から六箇月以内
十一 株式会社の株式交換 株式交換の効力が生じた日から六箇月以内
十二 株式会社の株式移転 株式移転の効力が生じた日から六箇月以内
十三 株式会社の株式交付株式交付の効力が生じた日から六箇月以内
2 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは,当該各号に定める者に限り,提起することができる。
一 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主,取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主,取締役,監査役又は清算人,指名委員会等設置会社にあっては株主,取締役,執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)
二 前項第二号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
三 前項第三号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
四 前項第四号に掲げる行為 当該株式会社の株主等又は新株予約権者
五 前項第五号に掲げる行為 当該株式会社の株主等,破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者
六 前項第六号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において組織変更をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は組織変更後の会社の株主等,社員等,破産管財人若しくは組織変更について承認をしなかった債権者
七 前項第七号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等,社員等,破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者
八 前項第八号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設合併により設立する会社の株主等,社員等,破産管財人若しくは新設合併について承認をしなかった債権者
九 前項第九号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等,社員等,破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者
十 前項第十号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等,社員等,破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者
十一 前項第十一号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は株式交換契約をした会社の株主等,社員等,破産管財人若しくは株式交換について承認をしなかった債権者
十二 前項第十二号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者又は株式移転により設立する株式会社の株主等,破産管財人若しくは株式移転について承認をしなかった債権者
十三 前項第十三号に掲げる行為当該行為の効力が生じた日において株式交付親会社の株主等であった者,株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者又は株式交付親会社の株主等,破産管財人若しくは株式交付について承認をしなかった債権者

(被告)
第八百三十四条 
次の各号に掲げる訴え(以下この節において「会社の組織に関する訴え」と総称する。)については,当該各号に定める者を被告とする。
一 会社の設立の無効の訴え 設立する会社
二 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(第八百四十条第一項において「新株発行の無効の訴え」という。) 株式の発行をした株式会社
三 自己株式の処分の無効の訴え 自己株式の処分をした株式会社
四 新株予約権の発行の無効の訴え 新株予約権の発行をした株式会社
五 株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え 当該株式会社
六 会社の組織変更の無効の訴え 組織変更後の会社
七 会社の吸収合併の無効の訴え 吸収合併後存続する会社
八 会社の新設合併の無効の訴え 新設合併により設立する会社
九 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割契約をした会社
十 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社及び新設分割により設立する会社
十一 株式会社の株式交換の無効の訴え 株式交換契約をした会社
十二 株式会社の株式移転の無効の訴え 株式移転をする株式会社及び株式移転により設立する株式会社
十二の二 株式会社の株式交付の無効の訴え株式交付親会社
十三 株式会社の成立後における株式の発行が存在しないことの確認の訴え 株式の発行をした株式会社
十四 自己株式の処分が存在しないことの確認の訴え 自己株式の処分をした株式会社
十五 新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え 新株予約権の発行をした株式会社
十六 株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え 当該株式会社
十七 株主総会等の決議の取消しの訴え 当該株式会社
十八 第八百三十二条第一号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社
十九 第八百三十二条第二号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社及び同号の社員
二十 株式会社の解散の訴え 当該株式会社
二十一 持分会社の解散の訴え 当該持分会社

(担保提供命令)
第八百三十六条
 会社の組織に関する訴えであって,株主又は設立時株主が提起することができるものについては,裁判所は,被告の申立てにより,当該会社の組織に関する訴えを提起した株主又は設立時株主に対し,相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。ただし,当該株主が取締役,監査役,執行役若しくは清算人であるとき,又は当該設立時株主が設立時取締役若しくは設立時監査役であるときは,この限りでない。
2 前項の規定は,会社の組織に関する訴えであって,債権者又は株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者が提起することができるものについて準用する。
3 被告は,第一項(前項において準用する場合を含む。)の申立てをするには,原告の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

(無効又は取消しの判決の効力)
第八百三十九条
 会社の組織に関する訴え(第八百三十四条第一号から第十二号の二まで,第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは,当該判決において無効とされ,又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み,当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は,将来に向かってその効力を失う。

(株式交付の無効判決の効力)
第八百四十四条の二
 株式会社の株式交付の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において,株式交付親会社が当該株式交付に際して当該株式交付親会社の株式(以下この条において「旧株式交付親会社株式」という。)を交付したときは,当該株式交付親会社は,当該判決の確定時における当該旧株式交付親会社株式に係る株主に対し,当該株式交付の際に当該旧株式交付親会社株式の交付を受けた者から給付を受けた株式交付子会社の株式及び新株予約権等(以下この条において「旧株式交付子会社株式等」という。)を返還しなければならない。この場合において,株式交付親会社が株券発行会社であるときは,当該株式交付親会社は,当該株主に対し,当該旧株式交付子会社株式等を返還するのと引換えに,当該旧株式交付親会社株式に係る旧株券を返還することを請求することができる。
2 前項前段に規定する場合には,旧株式交付親会社株式を目的とする質権は,旧株式交付子会社株式等について存在する。

(和解)
第八百四十九条の二
 株式会社等が,当該株式会社等の取締役(監査等委員及び監査委員を除く。),執行役及び清算人並びにこれらの者であった者の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解をするには,次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ,当該各号に定める者の同意を得なければならない。
一 監査役設置会社監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては,各監査役)
二 監査等委員会設置会社各監査等委員
三 指名委員会等設置会社各監査委員

  • 第八百五十条の見出しを削った

第八百五十条 民事訴訟法第二百六十七条の規定は,株式会社等が責任追及等の訴えに係る訴訟における和解の当事者でない場合には,当該訴訟における訴訟の目的については,適用しない。ただし,当該株式会社等の承認がある場合は,この限りでない。
2 前項に規定する場合において,裁判所は,株式会社等に対し,和解の内容を通知し,かつ,当該和解に異議があるときは二週間以内に異議を述べるべき旨を催告しなければならない。
3 株式会社等が前項の期間内に書面により異議を述べなかったときは,同項の規定による通知の内容で株主等が和解をすることを承認したものとみなす。
4 第五十五条,第百二条の二第二項,第百三条第三項,第百二十条第五項,第二百十三条の二第二項,第二百八十六条の二第二項,第四百二十四条(第四百八十六条第四項において準用する場合を含む。),第四百六十二条第三項(同項ただし書に規定する分配可能額を超えない部分について負う義務に係る部分に限る。),第四百六十四条第二項及び第四百六十五条第二項の規定は,責任追及等の訴えに係る訴訟における和解をする場合には,適用しない。

第三章 非訟

(非訟事件の管轄)
第八百六十八条
 この法律の規定による非訟事件(次項から第六項までに規定する事件を除く。)は,会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 親会社社員(会社である親会社の株主又は社員に限る。)によるこの法律の規定により株式会社が作成し,又は備え置いた書面又は電磁的記録についての次に掲げる閲覧等(閲覧,謄写,謄本若しくは抄本の交付,事項の提供又は事項を記載した書面の交付をいう。第八百七十条第二項第一号において同じ。)の許可の申立てに係る事件は,当該株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
一 当該書面の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付
二 当該電磁的記録に記録された事項を表示したものの閲覧若しくは謄写又は電磁的方法による当該事項の提供若しくは当該事項を記載した書面の交付
3 第百七十九条の八第一項の規定による売渡株式等の売買価格の決定の申立てに係る事件は,対象会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
4 第七百五条第四項及び第七百六条第四項の規定,第七百七条,第七百十一条第三項,第七百十三条並びに第七百十四条第一項及び第三項(これらの規定を第七百十四条の七において準用する場合を含む。)の規定並びに第七百十八条第三項,第七百三十二条,第七百四十条第一項及び第七百四十一条第一項の規定による裁判の申立てに係る事件は,社債を発行した会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
5 第八百二十二条第一項の規定による外国会社の清算に係る事件並びに第八百二十七条第一項の規定による裁判及び同条第二項において準用する第八百二十五条第一項の規定による保全処分に係る事件は,当該外国会社の日本における営業所の所在地(日本に営業所を設けていない場合にあっては,日本における代表者の住所地)を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
6 第八百四十三条第四項の申立てに係る事件は,同条第一項各号に掲げる行為の無効の訴えの第一審の受訴裁判所の管轄に属する。

(陳述の聴取)
第八百七十条
 裁判所は,この法律の規定(第二編第九章第二節を除く。)による非訟事件についての裁判のうち,次の各号に掲げる裁判をする場合には,当該各号に定める者の陳述を聴かなければならない。ただし,不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは,この限りでない。
一 第三百四十六条第二項,第三百五十一条第二項若しくは第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては,監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役),会計参与,監査役,代表取締役,委員(指名委員会,監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。第八百七十四条第一号において同じ。),執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者,清算人,第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項若しくは第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者,検査役又は第八百二十五条第二項(第八百二十七条第二項において準用する場合を含む。)の管理人の報酬の額の決定 当該会社(第八百二十七条第二項において準用する第八百二十五条第二項の管理人の報酬の額の決定にあっては,当該外国会社)及び報酬を受ける者
二 清算人,社債管理者又は社債管理補助者の解任についての裁判 当該清算人又は社債管理者
三 第三十三条第七項の規定による裁判 設立時取締役,第二十八条第一号の金銭以外の財産を出資する者及び同条第二号の譲渡人
四 第二百七条第七項又は第二百八十四条第七項の規定による裁判 当該株式会社及び第百九十九条第一項第三号又は第二百三十六条第一項第三号の規定により金銭以外の財産を出資する者
五 第四百五十五条第二項第二号又は第五百五条第三項第二号の規定による裁判 当該株主
六 第四百五十六条又は第五百六条の規定による裁判 当該株主
七 第七百三十二条の規定による裁判 利害関係人
八 第七百四十条第一項の規定による申立てを認容する裁判 社債を発行した会社
九 第七百四十一条第一項の許可の申立てについての裁判 社債を発行した会社
十 第八百二十四条第一項の規定による裁判 当該会社
十一 第八百二十七条第一項の規定による裁判 当該外国会社
2 裁判所は,次の各号に掲げる裁判をする場合には,審問の期日を開いて,申立人及び当該各号に定める者の陳述を聴かなければならない。ただし,不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは,この限りでない。
一 この法律の規定により株式会社が作成し,又は備え置いた書面又は電磁的記録についての閲覧等の許可の申立てについての裁判 当該株式会社
二 第百十七条第二項,第百十九条第二項,第百八十二条の五第二項,第百九十三条第二項(第百九十四条第四項において準用する場合を含む。),第四百七十条第二項,第七百七十八条第二項,第七百八十六条第二項,第七百八十八条第二項,第七百九十八条第二項,第八百七条第二項,第八百九条第二項又は第八百十六条の七第二項の規定による株式又は新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において,当該新株予約権付社債についての社債の買取りの請求があったときは,当該社債を含む。)の価格の決定 価格の決定の申立てをすることができる者(申立人を除く。)
三 第百四十四条第二項(同条第七項において準用する場合を含む。)又は第百七十七条第二項の規定による株式の売買価格の決定 売買価格の決定の申立てをすることができる者(申立人を除く。)
四 第百七十二条第一項の規定による株式の価格の決定 当該株式会社
五 第百七十九条の八第一項の規定による売渡株式等の売買価格の決定 特別支配株主
六 第八百四十三条第四項の申立てについての裁判 同項に規定する行為をした会社

(不服申立ての制限)
第八百七十四条
 次に掲げる裁判に対しては,不服を申し立てることができない。
一 第八百七十条第一項第一号に規定する一時取締役,会計参与,監査役,代表取締役,委員,執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者,清算人,代表清算人,清算持分会社を代表する清算人,同号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者,検査役,第五百一条第一項(第八百二十二条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第六百六十二条第一項の鑑定人,第五百八条第二項(第八百二十二条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第六百七十二条第三項の帳簿資料の保存をする者,社債管理者若しくは社債管理補助者の特別代理人又は第七百十四条第三項(第七百十四条の七において準用する場合を含む。)の事務を承継する社債管理者若しくは社債管理補助者の選任又は選定の裁判
二 第八百二十五条第二項(第八百二十七条第二項において準用する場合を含む。)の管理人の選任又は解任についての裁判
三 第八百二十五条第六項(第八百二十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による裁判
四 この法律の規定による許可の申立てを認容する裁判(第八百七十条第一項第九号及び第二項第一号に掲げる裁判を除く。)

第四章 登記

(株式会社の設立の登記)
第九百十一条
 株式会社の設立の登記は,その本店の所在地において,次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
一 第四十六条第一項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあっては,設立時代表執行役が同条第三項の規定による通知を受けた日)
二 発起人が定めた日
2 前項の規定にかかわらず,第五十七条第一項の募集をする場合には,前項の登記は,次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
一 創立総会の終結の日
二 第八十四条の種類創立総会の決議をしたときは,当該決議の日
三 第九十七条の創立総会の決議をしたときは,当該決議の日から二週間を経過した日
四 第百条第一項の種類創立総会の決議をしたときは,当該決議の日から二週間を経過した日
五 第百一条第一項の種類創立総会の決議をしたときは,当該決議の日
3 第一項の登記においては,次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店及び支店の所在場所
四 株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは,その定め
五 資本金の額
六 発行可能株式総数
七 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては,発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
八 単元株式数についての定款の定めがあるときは,その単元株式数
九 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
十 株券発行会社であるときは,その旨
十一 株主名簿管理人を置いたときは,その氏名又は名称及び住所並びに営業所
十二 新株予約権を発行したときは,次に掲げる事項
イ 新株予約権の数
ロ 第二百三十六条第一項第一号から第四号まで(ハに規定する場合にあっては,第二号を除く。)に掲げる事項
ハ 第二百三十六条第三項各号に掲げる事項を定めたときは,その定め
 ロ及びハに掲げる事項のほか,新株予約権の行使の条件を定めたときは,その条件
 第二百三十六条第一項第七号及び第二百三十八条第一項第二号に掲げる事項
ヘ 第二百三十八条第一項第三号に掲げる事項を定めたときは,募集新株予約権(同項に規定する募集新株予約権をいう。以下ヘにおいて同じ。)の払込金額(同号に規定する払込金額をいう。以下ヘにおいて同じ。)(同号に掲げる事項として募集新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合において,登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは,当該算定方法)
十二の二 第三百二十五条の二の規定による電子提供措置をとる旨の定款の定めがあるときは,その定め

十三 取締役(監査等委員会設置会社の取締役を除く。)の氏名
十四 代表取締役の氏名及び住所(第二十三号に規定する場合を除く。)
十五 取締役会設置会社であるときは,その旨
十六 会計参与設置会社であるときは,その旨並びに会計参与の氏名又は名称及び第三百七十八条第一項の場所
十七 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)であるときは,その旨及び次に掲げる事項
イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは,その旨
ロ 監査役の氏名
十八 監査役会設置会社であるときは,その旨及び監査役のうち社外監査役であるものについて社外監査役である旨
十九 会計監査人設置会社であるときは,その旨及び会計監査人の氏名又は名称
二十 第三百四十六条第四項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは,その氏名又は名称
二十一 第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは,次に掲げる事項
イ 第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがある旨
ロ 特別取締役の氏名
ハ 取締役のうち社外取締役であるものについて,社外取締役である旨
二十二 監査等委員会設置会社であるときは,その旨及び次に掲げる事項
イ 監査等委員である取締役及びそれ以外の取締役の氏名
ロ 取締役のうち社外取締役であるものについて,社外取締役である旨
ハ 第三百九十九条の十三第六項の規定による重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがあるときは,その旨
二十三 指名委員会等設置会社であるときは,その旨及び次に掲げる事項
イ 取締役のうち社外取締役であるものについて,社外取締役である旨
ロ 各委員会の委員及び執行役の氏名
ハ 代表執行役の氏名及び住所
二十四 第四百二十六条第一項の規定による取締役,会計参与,監査役,執行役又は会計監査人の責任の免除についての定款の定めがあるときは,その定め
二十五 第四百二十七条第一項の規定による非業務執行取締役等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは,その定め
二十六 第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは,同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは,その定め
二十八 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは,次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは,その定め
二十九 第二十七号の定款の定めがないときは,第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

(第九百三十条から第九百三十二条まで削除)

(裁判による登記の嘱託)
第九百三十七条
 次に掲げる場合には,裁判所書記官は,職権で,遅滞なく,会社の本店の所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。
一 次に掲げる訴えに係る請求を認容する判決が確定したとき。
イ 会社の設立の無効の訴え
ロ 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え
ハ 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては,当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この節において同じ。)の発行の無効の訴え
ニ 株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え
ホ 株式会社の成立後における株式の発行が存在しないことの確認の訴え
ヘ 新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え
ト 株主総会等の決議した事項についての登記があった場合における次に掲げる訴え
(1) 株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え
(2) 株主総会等の決議の取消しの訴え
チ 持分会社の設立の取消しの訴え
リ 会社の解散の訴え
ヌ 株式会社の役員の解任の訴え
ル 持分会社の社員の除名の訴え
ヲ 持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え
二 次に掲げる裁判があったとき。
イ 第三百四十六条第二項,第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定による一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては,監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役),会計参与,監査役,代表取締役,委員(指名委員会,監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。),執行役又は代表執行役の職務を行うべき者の選任の裁判
ロ 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定による一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者の選任の裁判(次条第二項第一号に規定する裁判を除く。)
ハ イ又はロに掲げる裁判を取り消す裁判(次条第二項第二号に規定する裁判を除く。)
ニ 清算人又は代表清算人若しくは清算持分会社を代表する清算人の選任又は選定の裁判を取り消す裁判(次条第二項第三号に規定する裁判を除く。)
ホ 清算人の解任の裁判(次条第二項第四号に規定する裁判を除く。)
三 次に掲げる裁判が確定したとき。
イ 前号ホに掲げる裁判を取り消す裁判
ロ 第八百二十四条第一項の規定による会社の解散を命ずる裁判
2 第八百二十七条第一項の規定による外国会社の日本における取引の継続の禁止又は営業所の閉鎖を命ずる裁判が確定したときは,裁判所書記官は,職権で,遅滞なく,次の各号に掲げる外国会社の区分に応じ,当該各号に定める地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。
一 日本に営業所を設けていない外国会社 日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。)の住所地
二 日本に営業所を設けている外国会社 当該営業所の所在地
3 次の各号に掲げる訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合には,裁判所書記官は,職権で,遅滞なく,各会社の本店の所在地を管轄する登記所に当該各号に定める登記を嘱託しなければならない。
一 会社の組織変更の無効の訴え 組織変更後の会社についての解散の登記及び組織変更をする会社についての回復の登記
二 会社の吸収合併の無効の訴え 吸収合併後存続する会社についての変更の登記及び吸収合併により消滅する会社についての回復の登記
三 会社の新設合併の無効の訴え 新設合併により設立する会社についての解散の登記及び新設合併により消滅する会社についての回復の登記
四 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割をする会社及び当該会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社についての変更の登記
五 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社についての変更の登記及び新設分割により設立する会社についての解散の登記
六 株式会社の株式交換の無効の訴え 株式交換をする株式会社(第七百六十八条第一項第四号に掲げる事項についての定めがある場合に限る。)及び株式交換をする株式会社の発行済株式の全部を取得する会社についての変更の登記
七 株式会社の株式移転の無効の訴え 株式移転をする株式会社(第七百七十三条第一項第九号に掲げる事項についての定めがある場合に限る。)についての変更の登記及び株式移転により設立する株式会社についての解散の登記
八 株式会社の株式交付の無効の訴え株式交付親会社についての変更の登記

  • 第九百三十七条第一項中「(第一号トに規定する場合であって当該決議によって第九百三十条第二項各号に掲げる事項についての登記がされているときにあっては,本店及び当該登記に係る支店)」を削った。
  • 第九百三十七条第四項を削った。

(特別清算に関する裁判による登記の嘱託)
第九百三十八条
 次の各号に掲げる場合には,裁判所書記官は,職権で,遅滞なく,清算株式会社の本店の所在地を管轄する登記所に当該各号に定める登記を嘱託しなければならない。
一 特別清算開始の命令があったとき 特別清算開始の登記
二 特別清算開始の命令を取り消す決定が確定したとき 特別清算開始の取消しの登記
三 特別清算終結の決定が確定したとき 特別清算終結の登記
2 次に掲げる場合には,裁判所書記官は,職権で,遅滞なく,清算株式会社の本店の所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。
一 特別清算開始後における第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定による一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者の選任の裁判があったとき。
二 前号の裁判を取り消す裁判があったとき。
三 特別清算開始後における清算人又は代表清算人の選任又は選定の裁判を取り消す裁判があったとき。
四 特別清算開始後における清算人の解任の裁判があったとき。
五 前号の裁判を取り消す裁判が確定したとき。
3 次に掲げる場合には,裁判所書記官は,職権で,遅滞なく,当該保全処分の登記を嘱託しなければならない。
一 清算株式会社の財産に属する権利で登記されたものに関し第五百四十条第一項又は第二項の規定による保全処分があったとき。
二 登記のある権利に関し第五百四十二条第一項又は第二項の規定による保全処分があったとき。
4 前項の規定は,同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。
5 前二項の規定は,登録のある権利について準用する。
6 前各項の規定は,その性質上許されないものを除き,第八百二十二条第一項の規定による日本にある外国会社の財産についての清算について準用する。

  • 第九百三十八条第一項中「(第三号に掲げる場合であって特別清算の結了により特別清算終結の決定がされたときにあっては,本店及び支店)」を削った。

第五章 公告

 改正された条文はありません。

第八編 罰則(§960~§979)

(過料に処すべき行為)
第九百七十六条
 発起人,設立時取締役,設立時監査役,設立時執行役,取締役,会計参与若しくはその職務を行うべき社員,監査役,執行役,会計監査人若しくはその職務を行うべき社員,清算人,清算人代理,持分会社の業務を執行する社員,民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役,監査役,執行役,清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者,第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役,会計参与,監査役,代表取締役,委員,執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者,同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者,第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者,検査役,監督委員,調査委員,株主名簿管理人,社債原簿管理人,社債管理者,事務を承継する社債管理者,社債管理補助者,事務を承継する社債管理補助者,代表社債権者,決議執行者,外国会社の日本における代表者又は支配人は,次のいずれかに該当する場合には,百万円以下の過料に処する。ただし,その行為について刑を科すべきときは,この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
二 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき,又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
三 この法律の規定による開示をすることを怠ったとき。
四 この法律の規定に違反して,正当な理由がないのに,書類若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写又は書類の謄本若しくは抄本の交付,電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供すること若しくはその事項を記載した書面の交付を拒んだとき。
五 この法律の規定による調査を妨げたとき。
六 官庁,株主総会若しくは種類株主総会,創立総会若しくは種類創立総会,社債権者集会又は債権者集会に対し,虚偽の申述を行い,又は事実を隠蔽したとき。
七 定款,株主名簿,株券喪失登録簿,新株予約権原簿,社債原簿,議事録,財産目録,会計帳簿,貸借対照表,損益計算書,事業報告,事務報告,第四百三十五条第二項若しくは第四百九十四条第一項の附属明細書,会計参与報告,監査報告,会計監査報告,決算報告又は第百二十二条第一項,第百四十九条第一項,第百七十一条の二第一項,第百七十三条の二第一項,第百七十九条の五第一項,第百七十九条の十第一項,第百八十二条の二第一項,第百八十二条の六第一項,第二百五十条第一項,第二百七十条第一項,第六百八十二条第一項,第六百九十五条第一項,第七百八十二条第一項,第七百九十一条第一項,第七百九十四条第一項,第八百一条第一項若しくは第二項,第八百三条第一項,第八百十一条第一項,第八百十五条第一項若しくは第二項,第八百十六条の二第一項若しくは第八百十六条の十第一項の書面若しくは電磁的記録に記載し,若しくは記録すべき事項を記載せず,若しくは記録せず,又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
八 第三十一条第一項の規定,第七十四条第六項,第七十五条第三項,第七十六条第四項,第八十一条第二項若しくは第八十二条第二項(これらの規定を第八十六条において準用する場合を含む。),第百二十五条第一項,第百七十一条の二第一項,第百七十三条の二第二項,第百七十九条の五第一項,第百七十九条の十第二項,第百八十二条の二第一項,第百八十二条の六第二項,第二百三十一条第一項若しくは第二百五十二条第一項,第三百十条第六項,第三百十一条第三項,第三百十二条第四項,第三百十八条第二項若しくは第三項若しくは第三百十九条第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。),第三百七十一条第一項(第四百九十条第五項において準用する場合を含む。),第三百七十八条第一項,第三百九十四条第一項,第三百九十九条の十一第一項,第四百十三条第一項,第四百四十二条第一項若しくは第二項,第四百九十六条第一項,第六百八十四条第一項,第七百三十一条第二項,第七百八十二条第一項,第七百九十一条第二項,第七百九十四条第一項,第八百一条第三項,第八百三条第一項,第八百十一条第二項,第八百十五条第三項,第八百十六条の二第一項又は第八百十六条の十第二項の規定に違反して,帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき。
九 正当な理由がないのに,株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会において,株主又は設立時株主の求めた事項について説明をしなかったとき。
十 第百三十五条第一項の規定に違反して株式を取得したとき,又は同条第三項の規定に違反して株式の処分をすることを怠ったとき。
十一 第百七十八条第一項又は第二項の規定に違反して,株式の消却をしたとき。
十二 第百九十七条第一項又は第二項の規定に違反して,株式の競売又は売却をしたとき。
十三 株式,新株予約権又は社債の発行の日前に株券,新株予約権証券又は社債券を発行したとき。
十四 第二百十五条第一項,第二百八十八条第一項又は第六百九十六条の規定に違反して,遅滞なく,株券,新株予約権証券又は社債券を発行しなかったとき。
十五 株券,新株予約権証券又は社債券に記載すべき事項を記載せず,又は虚偽の記載をしたとき。
十六 第二百二十五条第四項,第二百二十六条第二項,第二百二十七条又は第二百二十九条第二項の規定に違反して,株券喪失登録を抹消しなかったとき。
十七 第二百三十条第一項の規定に違反して,株主名簿に記載し,又は記録したとき。
十八 第二百九十六条第一項の規定又は第三百七条第一項第一号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)若しくは第三百五十九条第一項第一号の規定による裁判所の命令に違反して,株主総会を招集しなかったとき。
八の二 第三百三条第一項又は第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による請求があった場合において,その請求に係る事項を株主総会又は種類株主総会の目的としなかったとき。
十九 第三百二十五条の三第一項(第三百二十五条の七において準用する場合を含む。)の規定に違反して,電子提供措置をとらなかったとき。
十九の二 第三百二十七条の二の規定に違反して,社外取締役を選任しなかったとき。
十九の 第三百三十一条第六項の規定に違反して,社外取締役を監査等委員である取締役の過半数に選任しなかったとき。
二十 第三百三十五条第三項の規定に違反して,社外監査役を監査役の半数以上に選任しなかったとき。
二十一 第三百四十三条第二項(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第三百四十四条の二第二項(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による請求があった場合において,その請求に係る事項を株主総会若しくは種類株主総会の目的とせず,又はその請求に係る議案を株主総会若しくは種類株主総会に提出しなかったとき。
二十二 取締役(監査等委員会設置会社にあっては,監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役),会計参与,監査役,執行役又は会計監査人がこの法律又は定款で定めたその員数を欠くこととなった場合において,その選任(一時会計監査人の職務を行うべき者の選任を含む。)の手続をすることを怠ったとき。
二十三 第三百六十五条第二項(第四百十九条第二項及び第四百八十九条第八項において準用する場合を含む。)又は第四百三十条の二第四項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して,取締役会又は清算人会に報告せず,又は虚偽の報告をしたとき。
二十四 第三百九十条第三項の規定に違反して,常勤の監査役を選定しなかったとき。
二十五 第四百四十五条第三項若しくは第四項の規定に違反して資本準備金若しくは準備金を計上せず,又は第四百四十八条の規定に違反して準備金の額の減少をしたとき。
二十六 第四百四十九条第二項若しくは第五項,第六百二十七条第二項若しくは第五項,第六百三十五条第二項若しくは第五項,第六百七十条第二項若しくは第五項,第七百七十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。),第七百八十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。),第七百九十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第八百二条第二項において準用する場合を含む。),第八百十条第二項若しくは第五項(これらの規定を第八百十三条第二項において準用する場合を含む。),第八百十六条の八第二項若しくは第五項又は第八百二十条第一項若しくは第二項の規定に違反して,資本金若しくは準備金の額の減少,持分の払戻し,持分会社の財産の処分,組織変更,吸収合併,新設合併,吸収分割,新設分割,株式交換,株式移転,株式交付又は外国会社の日本における代表者の全員の退任をしたとき。
二十七 第四百八十四条第一項若しくは第六百五十六条第一項の規定に違反して破産手続開始の申立てを怠ったとき,又は第五百十一条第二項の規定に違反して特別清算開始の申立てをすることを怠ったとき。
二十八 清算の結了を遅延させる目的で,第四百九十九条第一項,第六百六十条第一項又は第六百七十条第二項の期間を不当に定めたとき。
二十九 第五百条第一項,第五百三十七条第一項又は第六百六十一条第一項の規定に違反して,債務の弁済をしたとき。
三十 第五百二条又は第六百六十四条の規定に違反して,清算株式会社又は清算持分会社の財産を分配したとき。
三十一 第五百三十五条第一項又は第五百三十六条第一項の規定に違反したとき。
三十二 第五百四十条第一項若しくは第二項又は第五百四十二条第一項若しくは第二項の規定による保全処分に違反したとき。
三十三 第七百二条の規定に違反して社債を発行し,又は第七百十四条第一項(第七百十四条の七において準用する場合を含む。)の規定に違反して事務を承継する社債管理者若しくは社債管理補助者を定めなかったとき。
三十四 第八百二十七条第一項の規定による裁判所の命令に違反したとき。
三十五 第九百四十一条の規定に違反して,電子公告調査を求めなかったとき。

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